2019年10月、今回はAntelope Audio Edge Go をお試しいただくべく、自身のユニットsacra や作曲、プロデュース、マニピュレーターとマルチに活躍されている「足土貴英」さんのご自宅スタジオにおじゃましました。
今回は足土さんも参加するバンドプロジェクト「明日クラゲに刺された」のヴォーカリスト「まーこ」さんにもお越しいただき、Antelope Audio Edge Go をインプレッション!。
もくじ
Antelope Edge Go はマイク本体内にサウンド処理のためのFPGA プロセッサーを内蔵した、[ Studio in a Mic ]とでも呼ぶべきUSBマイク。ただのUSBマイクとは一線を画す製品です。
専用のコントロールパネルでは、Antelope Audio のオーディオインターフェイスでその再現性の高さで既に高評価を得ている様々なヴィンテージマイクや、アウトボードを再現したモデリングが使用可能です。しかも、これらは内蔵FPGAプロセッサで処理されるため、PC側のプロセッサーに負担を掛けません。
足土さんの制作用メインDAWは、Studio One Professional。
Edge Goの設定を変えながら、「明日クラゲに刺された」の既存の楽曲のフレーズを まーこ さんに歌っていただきました。
それぞれのマイクのキャラクターの違いを感じ取っていただけると思います。
※オーディオの試聴は、出来るだけ良い環境・機材でおこなってください。より明確に音の違いがおわかりいただけると思います。
足土さん(以下A):
じゃあ、聞いてみよう。
●まず、何もかけてない「素」のやつです。
●次がSONYのC-800G。だいたい60万くらいするヤツ。
※注:専用電源と合わせると定価880,000円(税別)。2018年末に惜しまれつつ生産終了。
●次が47(NEUMANN U 47FET)
●次はAKG C12
●ついでにいつもの
(LEWITT LCT940/AMEK System 9098/UREI 1176(Rev.F)/APOGEE SYMPHONY I/O)
A:
なんとなくの違いはわかる?好みとかそういう部分でいいんだけど。
まーこさん:
ムズいけど・・・。
(雰囲気が)まるくなるやつはいっぱいあって・・・。
自分の好み的に「空気(感)」が入ってるほうが好きだから最初のやつ(Edge Go)とか・・・。
でも、2番目(Tokyo 800T)のほうがより「私の声」に近いと思う。
A:
確かに。僕も2つめの方が合ってると思う。
サンフォニックスSTAFF M (以下M) :
さて、ここまでで、まずいかがでしょうか?
A:
単純に音のクオリティは「めちゃくちゃスゴイ!」と思いました。ぶっちゃけ。
自分のオーディオインターフェイス、マイクプリとかコンプは、そうですね、だいたい全部揃えたら・・・、まぁそれなりの額はかかっていると思いますけど・・・、
設定によってはこっち(Edge Go)が勝ってるかもしれない。
ぜんぜんコレでいいんじゃないかな、と正直思いました。
これが20万円以下で買えるのならば、めちゃくちゃアリだと思います。
何も持っていない人が、CDにできるような機材を揃えていこうとなったら、今の若い人だったらこれでオッケー なのかも知れない。
M:
いまおっしゃったように、初めての人がこれで完結することもできるなっていうふうに僕は思ってるんですよね。
A:
あと、移動が楽ですよね。僕は仕事で地方に行くことも多いので、制作が止まっちゃうんですよね。
これだったら地方でもできちゃうかも。しかもプロのクオリティで。
M:
それではモデリングマイクの印象を伺っていきましょう。
A:
マイクに関してはどれも。Edge Goの「素」の音もすごいナチュラルで素敵だなと思ったのと、今っぽいですよね。
800G(Tokyo 800T)はめちゃくちゃすごいと思っていて、47(Berlin 47FT)とか12(Vienna 12)とかふっくらする系も、まあまあいい感じ。
47であれば優しさが出たり、12だったらガッツが出たりという、いい方向に行ってると思います。
「実際そのマイクを揃えようとしたら、いくらかかかる?」ってことを考えたら、非常にいいと思いますね。
マイクプリも、すごいムチャクチャいいと思ってます。
後半で使ったマイクプリ(RD47)は実はあまりよくわかってなくて、知らないマイクプリだったので・・・、でもなんかその中低域のどっしり感はめちゃくちゃ気持ちよかったです。
自分が聞いてて まーこ の声を切なく録るなら1073(BAE-1073MP)とかよりこっちの方がいいかもしれない、と思いましたね。
76(FET-A76)とか1073もすごい。1073はすごく(本物に)近いなと思います。
A:
以前他社のモデリングマイクもすごい気になっていて、試したこともあるんですけど、レンジ感の部分で「シミュレートしてます」感がちょっと強いかなと思ったんですよね。
そのマイクが発売された瞬間に、「買おうかな?」って思ったんですけど、それを十何万で買うんだったら、今のマイク(LEWITT LCT940)を買った方がいいのかなって思い直したんです。
けっこうEdge Goはもうその値段以上の感じで、モデリングもすごい素晴らしいっていう印象です。
Antelope Audio 小長谷さん(以下K):
正直モデリングの処理はどこのメーカーも大差ないのかも知れません。
でも、マイク本体の能力がかなり違うんじゃないかと自負しています。
A:
そういう事か。
A:
個人的な希望としては、僕みたいな(仕事の)タイプだと、このマイクが USB でも使えて、(XLR出力の)普通のコンデンサーマイクとしても使えたらいいなって思ったりするんですよね。
そういうハイブリッドだったら最高ですね。
普通のコンデンサ―マイクとしても使いたいけど、宅録でパッと録りたいとか、地方に行った時もUSBで録れるし。
ハイブリッドだと・・・、これは買っちゃうよな(笑)。
でもちょっと時代の先を行き過ぎちゃってる感じがありますよね。
K:
そうですよねー(笑)。
でも、実際にこれからのクリエイティブの方向性としては、ディレクターさんがいて、エンジニアさんがいて、歌い手さんがいて、みたいな感じじゃなくなってきて、もう歌い手さんが自分でプロデュースして、いろんなインターネットの媒体使って自分で発信して、っていう方向に向かっているので、もう製品はどんどん小さくなって簡略化されていくっていう方向性はこれはもう確実なんです。
A:
でも、他のレビューも読みましたけど、このマイクは使ってみないと(製品の良さが)なかなかわかんない。
僕もモデリングのマイクプリとか、コンプとかをわかんないまま使ってみて初めて、「めちゃくちゃイイじゃん!」ってなりました。
マイクプリとコンプとかに、結構日本でよく知られてるモデルがそんなに入ってないですよね。
例えばこれに他の有名どころとか、(TUBE-TECH) CL1B辺りが入ってくるともうちょっと違ってくるんだけどな。
K:
ヨーロッパやアメリカの市場で人気があるものが選ばれているんでしょうね。
あと、向こうでは実機が揃えられるというところですね。なので、かなりマニアックな機材がモデリングしてあります。結構「これ何っ?」ていうのが入ってます。
※Antelope Audio はブルガリアのメーカーです。
M:
僕はこの製品を、「これから始める」っていう人にもぜひ使って欲しいんですけど・・・。
プリセットもありましたよね?。
K:
プリセットも入ってます。使い易くブロードキャストとか歌録り用とかナレーションとか色々分かれてます。
それをそのまま使うっていうのもありですけどちょっと微調整するだけでかなりいいものになります。
M:
機材の知識がない人がこれを手にして使い始める時には、どういうふうに入っていくのがいいと思われますか?。
A:
さっきの まーこ じゃないですけど、設定で全然聞こえ方が変わってくるので、感覚で自分の好みを見つけるのでいいと思います。
なかなかスタジオとかで実機を触りにくい時代にはなってきてるので難しいとは思うんですけど。
僕は自分自身がそういう機会がある中では、すごく(この製品の)クオリティが高いということが良くわかるので、単純に「こんなに安く買えてラッキーだな!」って思っていいんじゃないかな(笑)。
ホントに何十万円、何百万円の価値のモノがこの中に詰まってるから。
K:
出来れば誰か詳しい人と一緒にEdge Goを触っていただくのが一番なんですけど・・・。
いきなりここに飛び付いてもらうには、もうちょっとユーザインタフェースが良くなった方がいいかも知れません。もうちょっとAntelope Audio側の努力も必要ですね(苦笑)。
M:
例えば「イージーモード」みたいな。
K:
そうですね、そんな感じですね。本国に提案しておきます。
A:
まあでもその、いわゆる予算感の漠然としたイメージからいったら、オーディオインターフェイスが3万円とか4万円あたりで入門機くらいの製品があって、そこからちょっと「本格的にしていこうか」っていうクラスのオーディオインターフェイスが10~20万円。
さらに「コンプも使ってきれいに録りたい。」で10~20万円。
「マイクプリも」で10~20万円。
それだけでもう50~60万円かかっちゃうから、その途中としては・・・、うーん、途中というかもうコレ(Edge Go)がベストでもいいかも知んない(笑)。
その3万円、4万円あたりから上が急に敷居が高くなっちゃうんだよね。
それを考えたら、Edge Goで揃えちゃうのがとても現代的だと思う。
M:
マイクやヴィンテージ機器のモデリングはどういう風に使い分けたいとかってありますか?
A:
ジャンルの感じや、男性か女性かとか、何人で歌うか、とかでマイクは得意不得意があるので、例えば まーこ だったらまさに800Gとかで倍音がすごい拡がるイメージがあるから、声をダブル、トリプルにしたときに、ウワーッて拡がるんですよ。それをうまく使えるだろうなって思うし、自分がやってるロック系のプロジェクトで自分のバンドとかの男性ボーカルだったら47とか12でふっくらとしたり、ガッツある感じで録ったり。
使い分けれるのがめちゃくちゃいいな。
制作側としては、めちゃくちゃ魅力ですね。
A:
でも自分がいま10万円台のマイクを買うならこれになると思いますよ。
余談ですけど、今使っているLEWITT LCT940も自分が家でスタジオワークとか人を呼んで仕事することがあるので、最初は「一応87持っとこうかな」って思ってたんですよね。
で、エンジニアの方とかに相談してみたら、「87は面白くないよ」って言われて。
「10万円台だとLEWITT ってヤツが、真空管とかFETとか 調整できていいよ」って。
シミュレーションじゃないですけど、結構きれいにも録れるということで、これは3年くらい前に買ったんです。
今まで使ってきたマイクがイマイチ良くないとか、シミュレーションも「まあ頑張ってるけどなぁ・・・」みたいなのはいろいろあったんですけど・・・。
今だったら 、クオリティ的にマイクの本体もモデリングもどっちも素晴らしかったので、コレですね。
結局僕は自分がギター&ベースだから、オーディオインタフェースから逃がれられないけど、ソフトシンセとかで完結出来る人は、もうDAWと MIDI 鍵盤とEdge Go。もうこれでいい。それで全てオッケー!。
自分で歌う人にはもうゼッタイですね。
M:
なんなら、パワードモニターもEdge Goから直接つないで、っていうのを僕は提案しています。
K:
つないでいただいても大丈夫ですよ。
ハウリングは気を付けないとダメですけどね。
あとは、USB ケーブルとショックマウント、そして卓上スタンドのセットになっています。ケースも付いてます。
A:
このショックマウントはすごい便利ですよね。
K:
そういう細かいところを予算削減のために安っぽそうなのが付いてくる製品もありますけど、そういうところはAntelope Audio製品は結構こだわって作ってたりするんです。
※試用を終えた足土さんからのコメントをいただきました。
自分の環境で録った音と比較しても、設定によってはまったく遜色がない。
むしろEdge Goで録った方が「スッキリしていていいかも!?」と思いました。
自分の環境もそれなりにお金はかけているので、悔しいような、感服というか複雑な気持ちです(笑)
※ちなみに普段の足土さんのシステムは・・・
・マイクロフォン:LEWITT LCT940
・マイクプリ:AMEK System 9098
・コンプレッサー:UREI 1176(Rev.F)
・オーディオインターフェイス:APOGEE SYMPHONY I/O
改善点としては、Antelope Launcherの安定性向上と、マイクプリとコンプレッサーにもっとメジャーな機器があったら嬉しいです。そうなったら無敵かも。
今回DAWはStudio Oneを使いましたが、Studio One はインプットとアウトプットで、それぞれ別のインターフェイスのドライバーを独立して設定できるので、Studio One ユーザーには使い易いと思います。
このマイクは正直時代が追い付いていない機材ですね。
「早すぎる」という気持ちと、機材をたくさん買って自分の環境を構築したのに、Edge Goだけで解決しちゃうっていう・・・(苦笑)。
認めたくないんだけど、音を聴いちゃうと認めるしかないという気持ちです。
PS.モデリングのマイクの名前に、都市の名前がついてるところが面白いですね。どこのマイクかわかりやすくて好きです。
■足土貴英(アヅチタカヒデ)プロフィール
名古屋にてバンドsacraを結成 同バンドのベーシストとして2004年プラティアエンターテイメントよりデビュー。
バンド活動と並行してアレンジャー,プロデューサーとして柴咲コウ/かりゆし58のアレンジなどに参加。
近年はAAAの原盤ディレクター業や、さくらしめじのライブマニピュレートなど、今回のマイクテストに参加したVo:「まーこ」とはバンドプロジェクト「明日クラゲに刺された」のメンバーとして活動。
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■「明日クラゲに刺された」プロフィール
Vo.まーこを中心に2018年8月に結成。初ライブは2018年11月に恵比寿club aimにて開催。SOLD OUTを果たす。
音楽のジャンルは幅広く、ROCK、POP、PUNK、Electronic等の音楽性を取り込み、バンドスタイルでライブを行う。
クラゲの持つ、『ゆるふわな見た目』と『毒を持っている』という特性が、Vo.まーこのキャラクターにマッチしたことをヒントに【明日クラゲに刺された】に命名。
略称は、あすくら。
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