さて、今回はABLETON PUSH2とNative Instruments Maschineの両者を見つめてみると、、、、というところを軽くピックアップしてみたいと思います。
といっても、細かい機能とかやり方とかの説明などはしません笑
なんでかというと、「打ち込みの便利さ」とか「やり方のわかりやすさ」とかいうものは、世代とか好みとかがあって、今時はもう何とも言えないと思うからです。
例えば「MPCライクだから非常にやりやすい!」なんて話は、多分、今20代の人からすると「だから何?」って話でしょうからね。
それに、そうした細かい面は「慣れ」で片付けられる問題だ、とも思うからです。
そうした細かいポイントではなく、もっと重要な事があるんじゃないか?と考えたときに、あまり大きく語られていないけど、非常に重要な事があるな、、、、と思いましたので、そういう事について書いてみたいと思います。
個人的には、これがつまり「ABLETON PUSH2 VS Native Instruments Maschine 論争」の答えなんじゃないか?と思う節もあるので、興味のある方は一つの参考としてみてください。
もくじ
上述した「あまり語られていないな」という事、それは、、、
という事。
つまり両者は目的と存在意義が大きく違うんです。
この問題は、言い換えると「使う人」「使う目的」によって大きく変わってくるんですね。
ではまず「DAW」であるABLETON PUSH2(Ableton Live)からご紹介してみたいと思います。
例えばPRO TOOLSだと「ARTIST CONTROL」とか「FADER PORT」のようなDAWコントローラーというものが存在します。
なんでこんなものが存在するのかと言うと、DAWソフトウェアの醍醐味でもある「ミックス/マスタリング」を行おうとする時、こうしたコントローラーがあると無いとでは、高度な音楽的編集ができるかどうか、に直結する場面が多々あるからです。
つまりDAWコントローラーとはミックス/マスタリングを助けてくれる存在だという事ですね。
そして「ABLETON PUSH2」。
これもまた「DAWコントローラー」の役割を十分担ってくれます。
一般的にミキシングではフェーダーが用いられますが、ABLETON PUSH2ではエンコーダーを用いて操作する事が可能です。
これによってリアルタイムでのボリューム操作や、ボーリューム操作の記録(オートメーション・レコーディング)が可能です。
動きのある音をソフトウェアで再現しようと思うと、手動でのオートメーションは欠かせませんよね。
また、絵を描くように「ポイントA」から「ポイントB」までのボリュームカーブをマウス操作で引く事ができるのもDAWの特徴。
長くDAWを扱ってきた方ならわかるかと思いますが、手動オートメーションでやりきれない場合に、このマウス操作で最終調整を、という事は頻繁に行うもの。
つまり手動操作とマウス操作の両方がある事で、ミックス作業は大きく様変わりするわけです。
また、ミックスだけでなく音作りにおいてもオートメーションは必須。
単純にエフェクトのON/OFFをするだけならばマウス操作で十分かもしれませんが、徐々にフィルターカットオフを開けていく、ダブディレイへのセンドを滑らかに開け閉めする、シンセフリークならばモーフィングするという事は、ノブ/エンコーダーによる手動操作とマウスによる微調整が欠かせません。
ABLETON PUSH2はどこか「音階打ち込みもできるサンプラー的コントローラー」のような記事・紹介が多いですが、実はこうしたDAW操作にかけても非常に優秀なのです。
MASCHINEというソフトウェアは、プラグインをブリッジできたり、ミキサー画面を持っていたり、SCENEによってソング構築を行えたりと一見「DAW」のようですが、実は全く異なります。
どちらかと言うとMPCやELECTRIBEのようなハードウェアサンプラー/シーケンサーのような性質を持ったソフトウェアシーケンサーといえるもので、DAWのような柔軟なミックス/マスタリング、精密精巧なオートメーションを行う能力はありません。
というか、機能としてのオートメーション編集(マウス操作)はあるのですが、びっくりするほどやりにくいのです。
正直、MASCHINEコントローラーでのリアルタイムレコーディングに何度もトライする方が早いでしょう。。。。
とはいえ、MASCHINEは巷での高い評価が示す通り、本当によくできたシーケンサーです。
音質も非常に優れています。
ですから、ゲットーミュージックのような「ザックリこそ至高」みたいな格好良さを持ったトラックであればDAWを必要とせず、MASCHINEだけで「完成」といえるところまで作り込む事が可能です。
それに、恐らくは「あえてDAWにならなかった」のがMASCHINE、それがゆえDAWに必ず付きまとう複雑さが非常に少なく、「音楽のイメージを具体化する事」にだけ徹する事ができます。
MASCHINEソフトウェアがDAW上でVSTプラグインとしてブリッジができ、また各トラックをパラアウトできるのも、「ミックス/マスタリングがやりたいならDAWでやってね」という意図でしょう。
以上のように、存在意義が全く違うシステムである両製品。
これをもっと実用的な点にまで言及してみたいと思います。
まず、両者の根元が違う事で、制作スタイルとして大きな違いが一つあります。
あくまでMASCHINEはハードウェア機材を模した制作スタイルですから「拍・小節」を単位としてシーケンスされます。
対してABLETON LIVEはDAWですから拍・小節はもちろん、「時間軸」でのシーケンスが可能です。
つまり、大方が4拍子単位のループで進められる楽曲ではMASCHINEの方が向いていますが、楽曲の始まりから終わりまで終始何らかの変化が行われたり、変拍子を取り入れたり、BPMが可変するなどの、多少トリッキーな楽曲をつくろうとなると、ABLETON LIVEの方が「つくり込みやすい」です。
(どちらもできないというわけでは無い)
また、個人的に非常に重要だと思う面は、
ということ。
ABLETON PUSH2は、製作時には「打ち込みコントローラー」であり「DAWコントローラー」でありながら、さらにライブ時にはNOVATION LAUNCHPADのような「ライブコントローラー」にもなるという事ですね。
対してMASCHINEは、ライブツールとしては非常に扱い辛い製品です。
例えば「ソングA」から「ソングB」に移行しようにも、まずその術がありません。
となると何らかのDAWに2つのMASCHINEを起動し、一方に「ソングA」、もう一方に「ソングB」を起動するとか、ソング上の全てのパターンをバラバラに出力してABLETON LIVEなどで再構築するとか、そうした方法をとる必要があります。
対してABLETON LIVEであれば、個別に作成したプロジェクトを一つのセットとして結合する事ができるので、作成した楽曲はそのままライブに活用できます。
この際、多数の楽曲が結合され複雑になりますが、いずれの楽曲も製作時からABLETON PUSH2を使っていたのなら、ディスプレイやパッドのカラーなどで即座に様々な情報を確認できますので、混乱する事もなく利用する事が可能ですね。
今回ご紹介したかった趣旨というのは、「MASCHINEよりABLETON PUSH2の方が良いですよ!」という事ではなく、どちらも非常に素晴らしい楽曲制作ツールだから、自分のあうのはどっちかな?とよくよく考えてみてほしい、という事にあります。
というのも「何もかも出来る」という事が果たしてベストなのか?というと、それもまた悩みどころです。
例えば「ミックス・マスタリングは最終的に専門家に任せよう」「自分はライブはしない、DJするためのトラックを作りたい」という事ならば、僕は、音質にかけては非常に優れているMASCHINEを選択する事をオススメします。
やはりDAWというものは色々な事が出来る分、複雑で難解です。
DAWとしては圧倒的な扱いやすさを備えたABLETON LIVEであっても、DAWではないソフトウェアとの比較となると流石に難しいかなぁ、と思う次第です。
そういった難解さを取り払いながらDAW的なメリットを可能な限り吸収したのがMASCHINEですから、多分、初めての制作機材としてはMASCHINEの方がわかりやすいかな、とも思います。
結局のところ、MASCHINEで作った「曲」の方がABLETON LIVEで作った「曲」よりも世界的にヒットしやすい、ヒットしにくい、何ていうおバカな話はどこにもなくて、大きな視点から見た双方の打ち込み能力としては、どちらも致命的な差はありません。「慣れ」で補完できる問題です。
しかし、ミックス/マスタリングとかライブですとか、「音楽を作った後の事」にまで考えを及ぼすと「どうにもならない」という事があるので、そういう事を、よくよく考えた方が良いかもしれませんね、というお話でした。