去る2024年10月21日、
WAVES初の一体型ライブミキシングコンソール[ eMotion LV1 Classic ]の発売を前に、メディア・インテグレーションさんに実機をお持ち込みいただき、弊社の音声部署スタッフがチェックしました!。
もくじ
弊社のNHKの音声業務などを担当する部署では、以前よりWAVES eMotion LV1(以下LV1)を業務で使用してきました。
まずはその導入の経緯を弊社スタッフKに聞いてみました。
スタッフK
AVID(digidesign時代)のミキサー卓VENUE PROFILEの現役時代から僕の上司がWAVESの Plug-inを多用していたんですね。
僕の所属部署は規模が大きくない部署なので、AVID S6LやDiGiCoを導入する予算もなくて、YAMAHAのミキサー卓+WAVES SuperRack(当時のMultiRack)の組み合わせではない選択肢として、WAVES純正の最新ミキサーLV1をツアー用に導入して、SoundGrid – dante変換を用いて運用することになりました。
その後、業務が増えてミキサー卓が不足してきたので追加購入の検討が必要になったのですが、その当時はちょうど半導体不足のタイミングで、丁度いい手頃な価格のミキサー卓の入手が難しい時期だったんです。
いろいろなメーカーのミキサー卓をデモしましたが、価格や運用の最適解としてステージボックスを含めたLV1を追加で導入することとなりました。
弊社のLV1にはそのタイミングから僕は携わらせていただいています。
次に実際にLV1をこれまで業務で使ってきた印象を弊社スタッフNも加えて聞いてみましょう。
スタッフK
まず単純に音が素晴らしいですね。
LV1の最大のメリットは「WAVESプラグインで音を作れる」というチャンネル・ストリップですが、最低限の純正Filter、EQ、Dynamics のみでも解像度が非常に高いので、僕のように細かいことがわからなくても音の違いは明確だと思います。
スタッフN
やはり音質ですね。
あとは、欲しいプラグインがほぼ制限なく使える点。
加えて全ての機器がネットワークで繋がるので、拡張性が高く、接続もシンプルな点でしょうか。
スタッフK
SoundGrid はネットワークで構築するシステムのため、各機器の接続や適合バージョンなどに関してある程度知識がないと安定したシステム構築ができませんでした。
それに慣れるまではメディア・インテグレーションさんのサポートは必須で、すごくお世話になりました。
スタッフN
コントローラー、液晶パネル、全部揃えると結局それなりのサイズ、パッケージになってしまう点ですね。
そうしてシステムに必要なものが多くなればそれだけ不具合が出るリスクも多くなってしまいます。
タッチパネルやFIT Controller 等のフィジカルコントローラーが従来のミキサー卓に比べると、操作感という点ではやはり少し劣ってしまいます。
あとはシステム的にネットワークの冗長化が難しいところでしょうか。
それではいよいよ今回eMotion LV1 Classic に触れてみた感想を聞いてみましょう。
スタッフK
音は従来機そのままかそれ以上(WAVES純正IONICのI/Oが使用されている)だと感じました。加えて前述のネットワーク関連の習熟が一切不要な点が素晴らしいので、とても導入しやすくなったと思います。
本体のサイズも信じられないくらいコンパクトですね。しかも軽い!。
「これまでの僕らのケースづくりの苦労はなんだったのか?」と上司ともども落ち込む程です。
スタッフN
本体画面の大きさと視認性、タッチパネルの反応のよさなどの操作性がやはり良いですね。
当然ですが、オールインワンであると言う点、かつ重量もさほど重くない。一人現場でも持っていけそうな雰囲気です。
価格というファクターも重要です。
スタッフK
特にないです!(笑)
あえて挙げるのであれば、不具合が出たときの対処が多少不安だという点。
従来機では、不具合(例えばサーバーやスイッチ部分)が発生した場合は、その部分だけ交換すればトラブルの切り分けも容易でよかったのですが、一体型となってしまったLV1 Classicは、本体ごとメーカー修理が必要になってしまうことが考えられますよね。
さらに挙げるとすれば、今回実際に拝見したLV1 Classic のケースは、弊社オリジナルよりも軽量ながらかなり大きくなってしまった印象があります。
弊社で熟考し、特注して組み上げたケースは実際のセッティングを考慮しつつも簡易で軽量なラックの組み合わせになっているので、一人で持ち上げたり運んだりすることに関しては、LV1 Classicのシステムよりも簡易であり軽量だと自負しています。
LV1 Classic についてのポイントはどういった点だったのでしょうか。
スタッフK
従来機を使用していた立場としては、フェーダー部のインプットメーターが画期的ですね。
各メーカーの従来卓にはそもそも必ずついていたものなので「ようやく対応したか」といった印象です。
従来機で使用している純正のFit Controllerにも加えて欲しい機能だと思います。
スタッフK
これまで様々なタッチディスプレイを試しましたが、さすが純正一体型なのでレスポンスがとてもよくて、オペレーションに支障はなさそうです。
スタッフK
WAVESのミキサー卓なので、プラグインで音作りをする点が”目玉”に思えますが、あえて使用感をコメントするのであれば、そもそもの音の解像度が高いというところがむしろ僕としてはおすすめポイントかな、と思います。単にWAVESが使いたいだけであれば他にも選択肢はありますからね。
このサイズ感で、WAVESが使えて、音が良くてアウトボード不要!というパッケージ。これが売りだと思います。
スタッフN
最初から入っているプラグインだけでも必要十分だと思いますが、普段から使っているプラグインがそのまま使えるのはやはり大きいですね。
あと使えるプラグインの種類が多いので、PAだけではなく、配信や音声のミキシング卓としても幅広く活用できそうです。
今回一足先に弊社で導入したYAMAHAの最新コンソールDM7 COMPACT と比較してみました。ちなみにそれぞれの市場販売価格は、
WAVES eMotion LV1 Classic 1,595,000円(税込)
YAMAHA DM7 COMPACT 1,870,000円(税込)
程度になっています。(2024年11月現在)
スタッフK
DM7の初運用の際にもLV1 Classic同様に、解像度の高さに驚きました。
あえて感覚を申し上げると、YAMAHAはYAMAHA。安定感・安心感はやはり高いです。
両者とも解像度は高いながらも、
・LV1 Classicは全帯域でクリア
・DM7は音の身の主張がありながらも全体的にクリア
といった印象でした。
LV1 Classicでは好きなプラグインで音作りをするため、フラットで自然でクリアに作られているのかもしれませんね。
あくまでも個人的所感であるとお断りしておきますね(笑)。
操作感も、両者とも従来のミキサー卓に比べれば多少のクセはあるんじゃないかな、と思います。
DM7であっても従来のYAMAHAの卓とは感覚が違うので、DM7もLV1 Classic もどちらも初手の戸惑いはあると思います。
YAMAHA CL/QL が販売終了となった今、サイズの制限がある場合ならばLV1 ClassicはDM7の競合になりえるのではないかと思います。
スタッフN
LV1 Classicは素直な音だな、っていう印象ですね。
YAMAHAは良くも悪くも「YAMAHAの音」って感じでした。
LV1 Classic の方が、画面がより大きいのはいいですね。
その場にいた他のスタッフアからは「アーティスト、現場、好みに応じて選択をしていくことになるだろう。」との声が聞かれました。
他に何か気づいた点や特筆するような点はありましたか?
スタッフK
LV1 Classic はこれまでLV1が気になっていた方にとっては最高の導入機だと思います。
ぜひ業界的にも広まることに期待しています。
これまでは各社でシステム構築がオリジナルとなっていたので、容易なトライアルやレンタルが難しかったんです。
LV1 Classic が共通言語となって所有する業者が増えればステージボックスやサーバーの貸し借りが一層容易になるはずです。
また、作り込んでいけばAVID VENUE S6LやDiGiCoなどの大型サーフェスがなくても、WAVESプラグインで作り込んだサウンドが供給できるのではないかなと思っています。
一方で、どれだけディスプレイやフェーダーコントローラーを増設しても従来の大型コンソールのようなチャンネルアクセスにはまだ追いつかないのは仕方のないところ。
表面手元16chはなかなか現場を選ぶでしょうね。
LV1で、128ch仕様32-48faderの超プロモデルなんていうのも将来的に出てきたら面白いことになりそうです。
SoundGridネットワークのリダンダントがもっと強化されれば現場での運用ももっと信頼できるようになるんじゃないかと思っています。
実際に、同じ案件でも規模が大きくなるとdanteに頼らざるをえず、現在はシステムを切り替えて使用するようにしています。
放送局へのレンタルや、お見積もりの相談も多数いただいています。
放送ミックスでも「WAVESプラグインを使用したい」という思惑がおそらくあるんじゃないでしょうか。
スタッフN
LV1の弱点を補う機能性が備わって、かつ競争力のある価格設定と相まってスキのないパッケージになったな!、という印象です。
・64モノラル/ステレオ入力チャンネル
・44モノ/ステレオバス:8グループ、24Aux、8マトリックス、3マスター、キュー
・32ビット浮動小数点ミックス・エンジン(44.1~96 kHz)
・0.8msの低遅延
・21.5インチマルチタッチスクリーン、輝度1000 Nit
・16+1モーター駆動100mmアルプス・フェーダー
・16+1高精度エンコーダー、チャンネルごとのLCDメーターを含むミニ・ディスプレイ、セレクト/ミュート/ソロ・キー付き
・ユーティリティ・キーとテンポ・パッドを備えた16レイヤー
・カスタマイズ可能な16+2キー
・16のWaves製プリアンプ(マイク/ライン入力付き)
・12ライン出力、2 AES出力、AES 入力(SRC付き)
・内蔵SoundGridサーバー(Extreme Server Gen10相当)がDSP処理を担当
・IOの追加:アナログ、AES3、Dante、MADIを含む最大14デバイス
・最大3台のプロセッシング・サーバーと4台のバックアップ・サーバーを追加可能
・4つのSoundGridスイッチポート:2 Ethercon + 2 Rj45
・ハイパワー・ヘッドホン出力(1/4 “ジャック+ミニジャック)
・HDMI /8 USB/ ネットワーク・ポート
・12v XLR4ランプ接続用端子
・冗長性を担保する二重化電源
・2年間の製品保証付き
・各入力チャンネル+全ミックスチャンネルに8つのプラグインを挿入可能なラック
・コンソールに含まれるプラグイン(Waves Tune Real-Time、F6 Dynamic EQ、eMo Q4 EQ、eMo D5 Dynamics、eMo F4 Filter、GEQ、X-FDBK、Primary Source Expander、R-Comp、R-Bass、H-Delay、Doubler、R-Verb、TrueVerb、GTR3、Magma Tube Channel Strip、eMo Generator)
・160の受賞歴のあるWavesプラグインをアップグレードで追加可能
・ソフトウェア・アップグレードでイマーシブ・インイヤー・ミキシングが可能(eMo IEM)
・ソフトウェア・アップグレードでDugan Auto Mixerオプション
・完全にカスタム可能なフェーダー配置
・各チャンネルのパラメーターを直感的にコントロール
・チャンネルのカラーを任意に変更
・チャンネル名の多言語サポート
・リコールセーフとスコープ・フィルターで最大1000のシーンを保存
・8ミュート・グループと16リンクDCAフェーダー
・ローカルVゲイン・トラッキングによるデジタル・プリアンプ・コントロールの共有
・ディレイ・アライメント・コントロールを備えたチャンネルごとのマルチ出力
・16トラックをUSBメモリーに本体だけで録音可能
・Ethernet接続で外部コンピューターからのマルチトラック録音/再生
・USBメモリーからのステレオ再生
・モバイル&タブレット用リモートコントロール・アプリ、FOHとステージの両方に対応
・本体寸法:W 402 mm H x 561 mm D x 560 mm(W 15.8インチ H x 22.1インチ D x 22インチ)
・本体重量:17.2kg
一体型コンソールとなり、総合性能を上げて来た!ということで、我社のスタッフには大変好印象だった様子。 小中規模現場で使用するコンソールの選択肢として強烈な印象を残してくれた今回のデモでした!。