前回の記事が志半ばで終わってしまいましたので、その続編を頑張ってみたいと思います。
前回は「WAVES GOLDとPLATINUMってどう違うのか?」ということからWAVES PLATINUMの利点をご紹介致しましたが、今回はWAVES GOLDのことについて取り上げていくことで、PLATINUMにとっての「地盤」となる面もわかるかと思いますので、途中で心折れることなくお読み進め下さい。
さて、表題の通り、WAVES GOLDがあればミックスダウンにコツなど必要ありません。
そもそもミックスダウンにおいて万能なコツなどなく、むしろ音を整える上で必要とされる基本的な事を押さえる事の方が重要。その「基本的な事」の第1ポイントは、「的確に音を捉えられること」ができるかどうか。
これができれば、あとは聴こえた通りの問題点をEQやコンプなどのプロセッサーで調整するだけ、仕上がりの質が格段に変わってくるでしょう。
さて的確に音を捉えるには、モニタリング環境を整える必要があります。
つまりは「モニタースピーカー」や「モニターヘッドフォン」とか呼ばれているモノものですね。
音楽制作のためのモニタリング環境が整っていない状態は、そもそも音を触る以前に大問題がある、といえます。
これはミックスダウンを行う以前の大重要ポイント、本記事をご参照いただく以前に振り返って頂きたい事です。
そして第2の重要ポイントは、「的確に音を触ること」が重要になります。
意図しない余計な効果を与えてしまいがちなDAW備え付けプラグインやフリープラグインではなく、「やりたい事を、やりたい分だけ」行えるアイテムが必要だということです。
これがつまり「ミックス/マスタリングプラグイン」ですね。
そんなミックス/マスタリングプラグインの中心にいる存在が、WAVES GOLD。
今回はそれについて少し使い方も含めてご紹介してみたいと思います。
もくじ
- 1 ミックスダウンとは?
- 2 WAVES GOLDとは?
- 3 ミックスダウンのコツはWAVESプロセッサーにあり
- 3.1 音を可視化するPAZ
- 3.2 必須といっても過言ではないRenaissance EQ、Q10、Renaissance Compressor、C1
- 3.3 音圧アップや、聴きやすさの重要なカギを握る定位を操作できるS1
- 3.4 上質のミックスに必要不可欠な特別なツール達、C4、MV2、MaxxBass
- 3.5 ボーカルに欠かせない必須ツール、DeEsser、Doubler、Tune-LT、AudioTrack
- 3.6 アナログフィールで音に親近感を、H-Comp、H-Delay、V-Comp、V-EQ3 / V-EQ4
- 3.7 不自然さのないサウンドや雰囲気を生み出すリバーブ達、IR-L Convolution Reverb、Renaissance Reverb、TrueVerb
- 3.8 仕上げの音圧アップに欠かせないマキシマイザー、L1 Ultramaximizer
- 4 まとめ
ミックスダウンとは?
Wikipediaによると、、、、
ミキシング (Mixing) とは、多チャンネルの音源をもとに、ミキシング・コンソールを用いて音声トラックのバランス、音色、定位(モノラルの場合を除く)などをつくりだす作業である。元のチャンネル数から少ないトラックに移行させるため、同義語としてトラック・ダウンとも呼ばれる。
作業的には作者や制作者の意図する音楽的表現を加味する上で、コンプレッサー、リミッター、 イコライザー等による音色加工、ダイナミクスや表情を加えたりする為にフェーダーでのレベル書き込みや、リバーブレーターやディレイなどの空間系エフェクターによる処理など、様々な方法論やセンスを組み込む作業でもある。ミキシングされた後のトラックは2チャンネル・ステレオ以外にもモノラル、5.1チャンネル・サラウンド、複数のトラックに配分されるSTEMミックスなど様々なトラック数になることもある。
身近な話ならば、要するに、DAWで各トラックのバランスだとかを整えて2mixを仕上げる作業、ですね。
ちなみに「マスタリング」もWikipediaで調べてみましょう、、、
録音による音楽作品制作において、ミキシングして作られた2トラック音源(トラックダウン音源、または2ミックス音源)を、イコライザーとコンプレッサー、その他のオーディオ・エフェクト機器を用いて加工し、CDやDVDやBD、インターネット上の投稿サイトといった最終的なメディアに書き出すために、音量や音質、音圧を調整すること。
つまりはミックスダウンを経た2mixを集めてアルバムやシングルといった「作品」に仕上げる作業ということですね。
実際に2016年現在はこの定義も曖昧となり、ミックスダウンの際にマスタリング的なことを済ませてしまう場合や、マスタリングでミックスダウンの様なことをするケースも少なくなく、現代のエンジニアさんは領分を越えた作業を強いられることが多く、大変。
そんな過渡期ではありますが、本来は、こうした違いがあることを覚えておきましょう。
WAVES GOLDとは?
WAVES社は100を軽く超える、主にミックスダウンやマスタリングで用いる多数エフェクト・プロセッサー・プラグインを開発・販売するメーカーです。
WAVES社はグラミー賞を獲る超一流エンジニアとも深い繋がりを持っている企業でして、つまるところWAVES社はミックス・マスタリングを知り尽くしており、さらに言えば「ミックス・マスタリングの質を向上させる」ことにも貢献しているメーカーでもあります。
そんなWAVES社が、「キチンとしたミックスダウンを行おう」とした時に、どんなジャンルを手がけようとも絶対に必要となるプロセッサーを厳選し、一つのパッケージとしたものが、このWAVES GOLDです。
(WAVES製品を調べていると「バンドル」という言葉が散見されますが、これを口語に置き換えるとつまり「パッケージ」という感じ。普通「パッケージってことか」で良いと思います。)
WAVES GOLDは弊社でもソフトウェア販売ランキングで常に上位5位以内に入っているベストセラー製品。
こんな製品が存在する、しかもこれがベストセラーであるという事を考えると、つまりミックスダウンを「行う」にはコツやテクニックというよりも「アイテム」が重要だといえるでしょう。
では、WAVES GOLDの実態に迫ってみたいと思います。
ミックスダウンのコツはWAVESプロセッサーにあり
さて、WAVES GOLDに含まれる全てのプロセッサーを取り上げるとどうしようもないので、私が考えるGOLDの主要製品に限ってクローズアップしてみたいと思います。( ´ー`)。о(つーか、取り上げるプロセッサー以外は、人に何か言えるほど知らない。。。)
音を可視化するPAZ
WAVES PAZは音の成分を可視化するリアルタイム・ビジュアルプロセッサーです。
簡単に言えば、どの帯域がどれだけ出ているか?が目で見てわかる様にしてくれるプロセッサーですね。
例えば「聞いた感じでは全然問題ないのに全然音圧が上がらないんだよな、、」という場合、恐らく何処かの帯域(低音だと思います)が出過ぎていたりするもの。
そんな時にPAZがあれば「あれ!?低音がバカみたいに出てるヤベーww」と気づく事ができるわけですね。
こんな極端な話ではなくとも、全体のバランス感のチェック/微調整、慣れてくれば絶妙な「塩加減」もここで考える事ができるようになるので、設備が整いきったスタジオとは言えない我々一般ピーポーにとってアナライザーは心強い味方です。
さて、こうした解析・アナライザー系の製品は、その解析品質が重要ですが、WAVES製のプロセッサーであるPAZなら全く安心。所詮はアナライザーですので、アナライザー上で素晴らしい出来になったところで、100%素晴らしいミックス!とはいきませんが、その他大勢のプラグイン・アナライザーを使うよりも充実した結果を得られるでしょう。
必須といっても過言ではないRenaissance EQ、Q10、Renaissance Compressor、C1
イコライザーやコンプレッサーというプロセッサーは、そのキャラクターや機能性のために場面によっては「適さない」という事があります。つまり「挿してる意味ない」とか「音が悪くなちゃった」とかを起こしてしまう訳ですね、、、
ミックスではそうした事が起こらない、逆に言えば「マグレで良くなった!」も起こさない、的確でシーンを選ばないプロセッサーが必要です。
そうした役割を担ってくれるのが、これら4つのプロセッサーでしょう。
WAVES Renaissance EQは、音声を2、4、6のいずれかの数で帯域を分割し、それぞれ個別にボリューム調整ができるプロセッサー。例えば室内ノイズや電源ノイズなどの不要な低域や、痛すぎる高域をゴッソリとカットする「フィルター」も備えています。正に万能ですね。
WAVES Q10は、グラフィックイコライザーといって音声を10帯域に分割し、各帯域を個別にボリューム調整できるプロセッサー。Renaissance EQと比べて細かい音声操作が可能になりますので、不要帯域のカットや、音楽的なまま平たく調整する、という使い道よりも「音作り」的な方向性で積極的に使えるプロセッサーだなぁ、と私は感じています。といっても調整関係でも全然使うのですが。。
大げさな表現になりますがWAVES Renaissance EQは「大ざっぱ」な音の調整を得意とする代わりに、音楽的な損失が少なく(元との違いが生じにくい)、WAVES Q10は「詳細精密」な音の調整を得意とする代わりに、音楽的な損失が生じやすい(元と全然違う音に作り上げることができる)という感じでしょうか。微妙に間違えている気もしますけど。。。
WAVES Renaissance Compressorは、その名の通りのコンプレッサーなのですが、本当に万能なコンプレッサーです。
万能コンプってどういう事?という話ですが、コンプレッサーというものは基本的に「何かの楽器・場面で使われること」を想定して作られている(と思う)製品が多く、その点がマッチしないと全然思う様にいかないのですね。
更に、逆に「コンプする対象を幅広く」として作られたコンプは、今度はアレコレと複雑になりすぎて超絶使いにくい、とか十分な効果が得られないという事になりがち、、、つまり、ちょうど良い塩梅を実現してくれているプロセッサーというのはゼロに等しい状況にあります。
ところが、そんな「ちょうど良い塩梅」を実現してしまい、世界中のプロフェッショナル・エンジニアからも「手放せない」と評価されたのが、このRenaissance Compressorです。どんな時でも「音を平均化したい、飛び出しを抑えたい」という時には積極的に使ってください。
そしてWAVES C1。
これまた強烈に優秀なプロセッサーで、Renaissance Compressorに迫るほど多数のエンジニアさんが愛用するプロセッサーです。C1はEQとかコンプとか特定のプロセッサーとして万能という訳ではなく、マルチエフェクター的に万能なプロセッサーでして、とはいってもギターマルチみたいに「とりあえずなんでもできる」「しょぼいエフェクトがたくさん入ってる」という訳ではなく、「ミックスで使う」事に絞り、良く良く考えて創られた高品位プロセッサーで、非常に便利な存在です。
例えばEQとコンプレッサーが複合されている事により「中域にだけコンプレッサーをかける」というような事が可能であったり、サイドチェインでキックの抜けをよくしたり、ゲートで無音時のマイクノイズを消したり、、、、などなど、何者かわからんけども色んな所でスゴい活躍するプロセッサーです。
使い勝手もよく、非常に簡単ですので、「多くの人は、ミックスと言ってはどんな事をやっているのだろう?」という事を学ぶにも適しています。
音圧アップや、聴きやすさの重要なカギを握る定位を操作できるS1
DAWには「PAN」なんて操作子がついており、それにより「右とか左」へ音を偏らせる事ができます。
しかし「左右の広がり具合を"広げる"」という事はできません。
それを実現してくれるのが、WAVES S1です。
ちなみにDAWのステレオトラックのPANを狭める事で「左右の広がり具合を"狭める"」という事はできる様に感じますが、DAWのPANは単にボリュームコントロールを行っているだけですから、位相の関係で歪みや損失が生まれたりしがちです。そうした問題に対しても自動的に対処してくれるという意味でもS1の存在は重要です。
ところで、パンニング処理はしっかりと行っていますか?
ステレオ音声とは「モノラルトラックが2つ、一方が右で、もう一方が左」という構造ですよね。つまり、左にあった音を全部右に寄せたとすると、片方に音声情報が押し寄せてくる事になるので、モノラルトラック一つに対する負荷は相当なものになってしまいます。つまり偏ったパンニングが施された状態は、口語で表現すると「音がごちゃごちゃしてる」「音が団子」「音が割れてる」というような症状に陥りやすいわけです。
対して右と左それぞれに、偏りなく音を配置してやるとすれば?
そうなんです!各モノラルトラックに「余裕」が生まれる訳ですね。つまり、この「余裕」が各音の明瞭度アップや音圧アップの余地になります。
ですから一歩進んだ「S1」マスターになる事は、明瞭で充分な音圧を持ったトラックを生む事に直結的に繋がる訳です。
上質のミックスに必要不可欠な特別なツール達、C4、MV2、MaxxBass
普通では解決しがたい、または非常に不便極まりない作業を、簡潔かつ高精度に行う事ができるプロセッサーが揃えられているのもWAVES GOLDの特徴です。
まずはWAVES C4。
これは音声を任意の4つの帯域に分け、処理したい帯域にだけコンプレッション/イコライジングが出来るプロセッサー。
どういう使い道かというと、既にステレオファイルとして仕上がっているドラムプレイの音声ファイルがあったとします。そしてこの音声ファイルをトラックに挿してみると、スネアのバランスが良くない。何が良くないって、オカズはちょうど良い感じだけど、それよりも強めに叩かれている2拍と4泊のアクセントが、大きすぎる、、、という事になったとします。
これをスネアの帯域に対してイコライジングすると「オカズ」まで削られる事になってしまいますが、C4ならば「スネアの帯域」にだけ「スレッショルド以上の音」に対し、叩くことができてしまう訳です。
「音の外科手術」なんて形容はmつまりこういう事なわけですね。
次にWAVES MV2、これはシンプルで「大きい音と小さい音を、それぞれボリューム調整できる」というプロセッサー。
生楽器というのはメロディ(歌やギターなど)とかアクセント(ドラムなど)以外に、「息使い」や「スライドノイズ」や「スナッピーの音」などの隠れるように存在する非常に重要な音があります。
つまり、こうした一つの音の中に存在する対局な2つの音を「簡単に」バランス調整する事ができる訳です。
そしてWAVES MaxxBass。
これは今や必要不可欠というエンジニアも多い「RenaissanceBass」の礎となった、ベースエンハンサー。
つまり、いろんな再生環境に適した音作りや、音そのものの補強に非常に優れたツールです。
まず本製品については、「Waves Platinumの特徴」の紹介ページの中のRennaissance Bassの項目をご参照ください。
こうした具合で、低域の補強や多様な再生環境への最適化が可能な製品が「RenaissanceBass」そして「MaxxBass」です。
「RenaissanceBass」は、MaxxBassと比べてパラメータが少ないことからもわかりますが、非常に簡単に低音補強が可能です。ただ低音といっても様々な低音があって、そのなかでもベースラインとかキックとかの低域を簡単に補強・最適化できる設計になっているようで、音楽制作の中で利用するのに適した性能を持っています。
対してMaxxBassはパラメータが多い故に「環境音や効果音」などの安定しない低音が含まれるソースへの利用にも適切。そのかわりにRenaissanceBassと比べてパラメータが多いので、少し設定の難易度が上がる、という違いがあります。
音楽制作しかしない私が個人的に感じたのは「RenaissanceBass」はEDMとか、ダブステップ・グライム・ドラムンベース・JUKE/FOOTWORKなどのベースミュージックで必要とされるサブベース(超低域)の補強に非常に便利。
対して「MaxxBass」は生楽器もの、つまりエレキベースやドラムで利用するには寧ろ「RenaissanceBass」より馴染みがよい感じがしました。とはいえ、どちらにしても、何もないよりは遥かに低域の作り込みのクオリティを上げられることはまちがいないでしょう。
ボーカルに欠かせない必須ツール、DeEsser、Doubler、Tune-LT、AudioTrack
ボーカリストがレコーディングをしました、の次に高品位な仕上げを求めるならば絶対必要となるのが、ボーカルプロセッサーです。
WAVES GOLDにもボーカルプロセッサーは付属しており、ボーカルの質を必要十分なところまで高める事が、容易に可能です。
まずは、WAVES DeEsser。
これは「サ」などの音で発生する「かすれたようなノイズ」を除去できる「ディエッサー」と呼ばれるプロセッサー。
「シブヤー」とか「サガミハラー」という言葉を大きな声でレコーディングするとわかるのですが、「し」とか「さ」の音が異様に目立つんですよね。この理由が「かすれたようなノイズ」なのですが、これをコンプやEQで取り除こうと思っても、結構うまくいきません。こうした時に「ディエッサー」と呼ばれるプロセッサーが必要になるのですね。
使い方はカンタン。まずはスレッショルドを必要以上に小さくし、次に「かすれたようなノイズ」が一番隠れるところをフリークエンシーを調節して見つける。見つかったら後はスレッショルドを上げていき、自然かつ「かすれたようなノイズ」も隠れるちょうどよい具合にするだけ。
次はWAVES Doubler。
もう名前の通り、声が「ダブル」になっちゃうプロセッサーです。
こう表現してしまうと何ともバカっぽいですが、その効果はバツグン。
実際にグラミーを獲得する、または競うような楽曲では、ほとんどでこの「ダブルトラッキング」というテクニックを使っていますね。こだわれば重ねる歌も自分で録る、という手もありますが、場面によってはサラッとこうしたツールを利用する方が良いです。
そしてWAVES Tune-LT。
要するにケロケロさせる事ができるプロセッサーですね。
ただ、ケロケロさせるだけではなく、ブレた音程を「自然に」整えることも可能ですので、ちょっと外れてるのが気になるけど、テイクとしては悪くないから使いたい!という場合にも重宝します。
ミックスにおいて私はドSなので「ボーカルがキーを外しまくるとか論外」「外れてるのも味」と、ボーカルにこうしたツールを使う事は少ないのですが、積極的にこうしたツールを使われる方の中には「Auto-Tuneより好き」という方も多く妥協せずご利用いただけるプラグインです。
ちなみに私はオーディオ化されてしまったリードシンセ音などで使ったりもします。
最後がWAVES AudioTrack。
これはイコライザー、コンプレッサー、ゲートというエフェクトが複合したチャンネルストリップ的なプロセッサー。
声を整えたり作ったり(EQ)、音量のばらつきを整えたり(コンプ)、マイクノイズや環境ノイズを取り除いたり(ゲート)、、、、と、様は雑誌でもあちこちのブログでも言われているような「ボーカル処理」を一気に担ってくれるプロセッサーというわけです。
ボーカルトラックには、使わないとしても一つ挿しておいた方が良いと思います。
非常に軽いですし。
アナログフィールで音に親近感を、H-Comp、H-Delay、V-Comp、V-EQ3 / V-EQ4
古いヴィンテージプロセッサーなどを使うと、なんとも言えない「温かい音」が得られますよね。
こうしたアナログサウンドというのは、むしろ音楽をしている人より「音楽が好き」というだけの聴き専の人のほうが食いつきがよい(気がする)ので、ミックスダウンの中でぜひ取り入れていきたいところです。
さて、WAVES H-CompやWAVES H-Delayは「この機材」と特定の機材をモデリングしたのではなく、なんというか漠然とした「アナログサウンド」というイメージを簡単にもたらしてくれるプロセッサーです。
例えばH-Delayのディレイサウンドは、いわゆるアナログディレイ特有の「揺れ」とか「エコーの減衰」があって、もうRoland SpaceEchoを使っているような気分。
H-Compも、単にコンプレッションを与えるだけでなく、なにか角がとれる(丸くなると言えるほどではない)ので、聞き手に耳当たりの良さを与える音になりますし、スレッショルドを上げていけば「歪み」や「暴れ感」が生まれ、めちゃくちゃカッコ良くできます。
そしてWAVES V-CompやWAVES V-EQ、これはアナログ機材の代表格のひとつである「NEVE」のコンソールで使われていたEQやコンプを、WAVESが精巧にモデリングし生みだしたプロセッサー。
UKロック的な「湿ったサウンド」を愛する人がNEVEコレクターになっている事からも分かるように、「明らかな変化」とまではいかないけども、絶妙な湿り気といったアナログフィールを与えてくれるので、使い所では欠かせない強烈なプロセッサーです。
不自然さのないサウンドや雰囲気を生み出すリバーブ達、IR-L Convolution Reverb、Renaissance Reverb、TrueVerb
昔のスタジオでは「リバーブ・プロセッサー」などの機械で残響音を与えていたのですが、現代は科学が発展しすぎて「その場所にいるとこうなるだろう」という残響モデリングまで可能になっています。
WAVES GOLDには、こうした多様なディレイエフェクトを「選んで使える」というパッケージ内容にもなっています。
WAVES IR-Lは「インパルスレスポンス」という特定の場所の残響データを読み込んで、その場所にいるとこうなるだろうを擬似的に再現するタイプのリバーブ。
簡単に言えば「なんとかホール」という場所のインパルスレスポンスをIR-Lに読み込ませると、その場所に行ったかのようなリバーブ(というかリアルな環境残響?)が得られるというものです。
そしてWAVES Renaissance Reverbは、アナログ・ハードウェアリバーブのサウンドを模倣しており、これはこれで味があって素晴らしい。音楽にとっては「リアル」である事が必ずしも良いという訳ではないという事です!
対してWAVES TruVerbは、デジタルならではの特徴である減衰や変容を与えない素直なリバーブプロセッサー。
ボスコンでいえば、TrueVerbはデジタルディレイ、Renaissance Reverbがアナログディレイという感じですかね。
と、こんな三者三様のリバーブが揃い、場面に適した雰囲気作りが可能だというのは、クオリティに直結するので重要ポイントですね。
仕上げの音圧アップに欠かせないマキシマイザー、L1 Ultramaximizer
今や「音圧」といえば「WAVES L3」という時代ですが、そのL3の礎であるWAVES L1が本プロセッサー。
かつてWAVES L1が登場した時点では、WAVES L1は今のL3のように、かなりの驚きと感動で迎えられた実績があります。
L1は、音圧アップという面で言えばL3には適いませんが、それでも上述のようなパンニングやイコライジングなどのミックスがしっかり行えていれば、L1でも素人を納得させられる程度には必要十分な性能を持っています。
むしろデジタルとアナログがひしめき合っていた時代にデジタル、しかもソフトウェアという立ち位置で時代を切り開いたプロセッサーですから、その音の傾向が要注目の一品でもあります。
L3やL2ではなく、この音が好きだからとL1を愛用するエンジニアもいる、そんなマキシマイザーです。
まとめ
WAVES GOLD、まさに至れり尽くせりです。
プロのアーティストも「WAVES GOLDさえあれば、、」という方は少なくなく、本当に実用に耐えうるものというのも、これだけ揃っていれば確かにな。と納得できるところです。
実際にここで紹介した各プロセッサーの特徴を参考として利用し、いずれも使いこなしていると公言できる位の熟練度に達した時には、必然的にハイクオリティなサウンドに到達している事でしょう。
さて、表題の「ミックスダウンにコツなどいらない」というのは、少し乱暴な表現だとは思います。
しかしミックスダウンという作業は、ここで紹介したような「プロセッサーの存在意義」みたいな事を理解し、適材適所で「良い感じになるように」触れば良いだけ、という事が7割から9割も占められた作業でもあります。
プロフェッショナル・スタジオが豪華なスピーカーシステムやプロセッサーを設けているのは、何も見栄ではなく、本当になにより必要な機材だからです。
つまりミックスダウンを上手に行えるようになるには、まずは機材を揃えることが重要。
DAWというコスパに優れた現代であれば、正にWAVES GOLDは理想的な「機材」と言えるでしょう。
さて、今回のWAVES GOLDのご紹介の中で、ハと気づいた方は何人いらっしゃったかな?
実はWAVES GOLDには、マスタリングを可能にするという謳い文句のプロセッサーは入ってないのですね。
WAVES GOLDだけでマスタリングが出来ないという事はありませんが、正直、現代の市場に十分対抗できるほどの品位には届かないと思います。
そうした「あと少し、足りないところ」を補完するのが、上位互換バンドルであるWAVES PLATINUMというわけです。
もしマスタリングや、他人から依頼されるミックスダウンなどに興味がある方は、ぜひWAVES PLATINUMを紹介する記事もご参照ください。
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