もくじ
Pro Tools 12.5でついにあの機能が実装
Pro Tools 12が発表されたときに公開されたAVIDクラウドコラボレーション機能。
つい先日NAMM SHOWにて12.5へ実装されることが正式に発表されました。
今回、このコラボ機能のデモンストレーションを見る機会がありました。
機能の詳細はどうなっているのか、どんなメリットがあるのかについて解説をさせて頂きます。
1. どんな機能なの?
例えばバンドのメンバー同士でDAWを利用して一つの曲を作る時、セッションデータのやり取りはどうしているでしょうか?
今までであればUSBメモリや外付けHDD、光学メディアなど何らかの保存機器に書き込んで渡したり、WEB上の大容量ファイル転送サービスを利用して相手に送って向こうのDAWで開いてもらって作業してもらうという感じで行っていたと思います。
こういったデータの受け渡しには結構転送時間や圧縮したりの手間がかかり正直言って面倒です・・・。
面倒になってしまい曲の進捗もとまってしまう・・・そんな悪循環にも繋がってしまいます。
細かい指示や意見を伝えても双方には反映されないのでそこでもまた手間が発生します。
音楽制作では瞬時のインスピレーションをすぐに形にできる事が望ましいのでこういった手間というのはなるべく避けたいものです。
これらの問題を解決するのが、Pro Toolsの次のアップデートである12.5で実装されるAVID クラウドコラボレーション機能です。
この機能は簡単に言えば離れた所にいても、同じプロジェクトを開きながら作業ができるというような感じです。
これには最近よく聞くクラウドという技術を利用し、機能を実現しています。
※クラウドとは?
データやソフトウェアを自分のパソコンではなくインターネット上のサーバーなどに入れておくことで、外出先や、他人のPCからであっても同じデータやソフトウェアにアクセスする事ができるという技術。
これによりセッションデータをクラウド上に置いておくことで参加するメンバー全員が同じセッションで作業をすることができるということです。
共有のHDDにセッションデータが置かれて更に複数のPCから同時にアクセスでき、かつ更新情報もシームレスに参加者全員に反映できる・・・。というスムーズな作業を可能にする機能なのです。
インターネットを利用した機能なので、たとえ違う国にいたとしてもそれは可能です。
どこにいても制作環境とインターネットさえあれば共同で音楽制作ができてしまうという事ですね。
一体これができるようになるとどんな事が可能になるのかというと・・・。
- データのやり取りが必要なく、待ち時間を短縮できる。
- 同じデータを見ながら作業できるため、指示や細かな意見を相談をしながら制作を進めるのが楽に。
- 知らない人とでもコラボして制作を始められるので、新しい仲間を見つけられる。
- 有名人ともコラボできるチャンスがある。
少し思いつくだけでもこんなにメリットがありました。
新しい共同制作の形ですね!
2. 実演を見た感想
デモンストレーションはAVIDのスタッフの方が実際に2人で制作していくという状況を再現していました。
やはり同じ画面を見ながら作っていけるので効率も上がりますし、より細かいところまで作りこめるような相談が捗るでしょう。
デモでは一人が作ったリズムトラックに対してもう一人がギターを乗せ、ベースの音色を変更するなどしていました。
こういう風にリアルタイムで、まさにスタジオで顔を突き合わせて作業をするような感じで制作を進めていくことができるので、離れた所にいてもファイルのやり取りで時間をロスすることなくスマートな作業が可能です。
コミュニケーション手段については専用のチャットが用意されています。
ここではちょっとした絵文字も使えるほか、他の人が手を加えた場所を表示してくれます。これで相手がどこに何をしているのか簡単に確認する事ができます。
3. プラグインはどうなる?
セッションを受け渡す際にも問題となってくるのが所持しているプラグインの差です。
相手も同じプラグインを持っていなければそのプラグインによる音は相手の環境で再現する事が出来ません。
普通であれば一度そのトラックをバウンスしてオーディオ化していれば再現する事はできていましたがこれには時間もかかる上、相手側での修正が容易にできないという問題もあります。
このプラグインの問題はPro Tools 12.4で実装されたフリーズ機能を利用する事で解決できます。
元々この機能はインストゥルメントやプラグインを内部的にはオーディオ化する事によって、多くのインストゥルメントやエフェクトを使いすぎてパソコンの処理が追いつかなくなった時に動作を軽くする事ができる機能です。
Logicをはじめとし、Cubaseにも搭載されていて、既にDAWにおけるスタンダードとなりつつある機能です。
この機能の内部的にオーディオ化するというのが重要な点であります。インストゥルメントもエフェクトプラグインもバウンスによってオーディオ化してやれば問題なく相手側で再生はできますが、手間と時間がかかってしまうのが問題でした。
しかし、フリーズ機能であればクリックひとつで内部的にオーディオ化され、更に同じトラックにMIDIノートも残っていつでもワンクリックでまた戻すことが可能となっています。
コラボ時の作業ではプラグインの差を確認しながら必要に応じてフリーズ機能を活用する必要があるようです。
また、先にあったようにインストゥルメントの場合フリーズをしてもノートはそのまま保存され、相手からも見る事ができます。
持っていないプラグインのフリーズを解除するとオーディオデータは消え、ノートだけが残ります。
そうするとプラグインを持っていないのでそのノートは再生できませんが、違う音源プラグインを刺せば音色は変わりますが、ノートのフレーズを再生する事はできます。
これで再生する事はできるので、相手が使っていた音色を差し替えて新たな提案をする事も可能なのです。
こうしてAVIDクラウドコラボレーションではプラグインの所持状態に関わらずに自分の使いたいプラグインを使って共有する事ができるのです。
4. クラウドコラボレーションはここが便利
離れた仲間と曲を作っていくのはもちろんですが、AVIDのコミュニティに登録している知らない人で趣味の合いそうな人を探してコラボができるというのも一つの魅力です。
一人で作っているだけでは生まれない新たなフレーズが生まれるチャンスとなります。
また、周りに欲しい楽器のプレイヤーがいない時も、ここで探してちょっと依頼するなんて事ができれば相当に助かりますよね?
そこから意気投合してユニットやバンド結成というのも今後あり得るのではないでしょうか。
更にメンバー募集をここでやってしまうというのも手ですよね。
スタジオ代の節約にもなるので浮いたお金で新しい機材の導入もできてうれしい事だらけです。
また、AVIDコミュニティには世界中の著名なアーティストも登録する事が予想されますので、もしかするとコラボできるチャンスがあるかもしれません!
5. まとめ
如何でしたでしょうか。
さっそく使ってみたくなった方も多いと思います。
コラボ機能は製品版のPro Tools以外にも無料版であるPro Tools | Firstでも利用できるようになる予定です。
気になった方でまだPro Toolsのご購入を検討中の方はまずこちらのリリース後にお試し頂くのが良いと思います。
クラウドを利用したインターネットによるコラボレーション機能というのは他のDAWでも搭載され始めています。
メジャーなDAWですと現時点ではCubaseがバージョン8.5で「VST Transit」というコラボ機能の搭載予定を発表しています。
しかし、こちらは基本的にはAVIDクラウドコラボレーションと同じく無料ですが、ストレージ容量と月間の通信料に制限があり、より大容量なストレージと通信料が必要な場合、月額のプランを購入する必要がでてきます。
インターネット全盛の時代ですから将来的にはDAWにおいてスタンダードな機能になって行きそうな予感がしています。
↓AVID公式による紹介動画はコチラ
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