当記事は「88鍵盤MIDIキーボードの理想が集約された、Studiologic SL88 – Vol.1」の続編となる記事です。
さて、前回では「鍵盤とそのフィーリング」についてのみ注目し、いかに鍵盤フィーリングが優れているかをご紹介致しましたが、本記事はもう少し「ピアノ演奏者」のための実用性に注目した優れたポイントを追求してみたいと思います。
「電子楽器」であることの優位性を追求した最先端機能
生のピアノに長く親しんできた人ならご存知のことだと思いますが、出先の初めて利用する「慣れ親しんでいないピアノ」を利用する時、どうしても違和感があるものです。
また「2台目の電子ピアノだ」、とか「2台目の鍵盤型MIDIコントローラーだ」という場合にしても、ずっと使ってきた機材から乗り換えたならば、何らかの違和感は生じることでしょう。
逆に、プレイヤーとしての自分自身が、こうした楽器・機材それぞれのタッチ特性を踏まえた上で演奏する「クセ」がついてしまい、フラットな楽器・機材に触れたときに「クセ」が邪魔になる、ということもありうることです。
つまり何が言いたいかというと、演奏をするという事は常に他人とは共有できない「フィーリング」というものがあるものだということです。
こうしたプライベートな問題を解消しようという場合、アコースティックピアノであれば調律師やリペアマンの力を借りるか、または自分のクセを矯正する必要があります。
非常に苦痛を伴う作業ですよね。
そこでstudiologic SL88は、この点を緩和させるべく機能を搭載しています。
これは「パーソナル・ベロシティカーブ・デザイン」という機能で、パソコンとstudiologic SL88を接続することで利用出来る「SL EDITOR」から、タッチフィーリング(強弱の感度)の調整をすることができるというもの。
鍵盤自体を重くしたり軽くしたり、ということは出来ないまでも、タッチの強さによる「反応具合」を自分自身で設定できてしまうというのは、かなり労力の緩和になります。
例えば「ここぞ!という時には生ピアノを弾くんだけれども、多くはソフトウェアでまかなおうか。」という場合に生じる障害は、あらかじめ「パーソナル・ベロシティカーブ・デザイン」のようなプライベートな機能により、限りなく違和感の少ない演奏環境が実現し、演奏そのものに集中することができるでしょう。
ちなみに「パーソナル・ベロシティカーブ・デザイン」は本体に保存ができるので、例えば SYNTHOGY IVORY II VR のような、SL88利用時にパソコンが必要ない機材を利用する場合でも問題無し。
しかも「パーソナル・ベロシティカーブ・デザイン」は6つまで保存できますので、かなりプライベートな話だと「体調に応じたタッチの違い」まで用意しておくことができます。
そして、こうした臨時の対処であっても「わかりやすく」「正確に」「素早く」設定変更が可能なディスプレイが本体についている、ということも非常に重要ですね。
忘れてはならない「足回り」のこと
ピアノ演奏をより充実したものにするにはペダルの存在がかかせません。
そもそもstudiologic SL88 Grandには1本のダンパーペダル(ON/OFFのみ)、studiologic SL88 Studioには1つのスイッチペダル(ON/OFFのみ)がもともと付属しており、手元に届いてすぐにこれらをダンパーペダルなどとして利用し、足元の事まで楽しむことが可能です。
さらにstudiologic SL88には、別売りで本格的な「studiologic SLP-3D」3本ペダル(ソフトペダル、ソステヌートペダル、ダンパーペダルとして挙動可能)が用意されています。
この3本ペダルはスイッチ(ON/OFF動作)ではなく、中間の踏み込み具合も感知するコンティニアス・ペダルですのでハーフペダルなどの表現が可能*。
※ソフトウェアがこれらコントロール情報の処理に対応している必要があります。現時点で弊社で確認できているのはIVORYとPIANOTEQのみです。
この機能は現時点で他のどの鍵盤型MIDIコントローラーにも搭載されていないものですので、studiologic SL88がいかに「ピアニストのために」と思い入れたかが伺える仕様です。
また、studiologic SL88シリーズには以下の4つのペダル入力を備えています。
- ON/OFF感知のみの入力1
- ON/OFF感知のみの入力2
- コンティニュアンス対応した入力3
- コンティニュアンスとstudiologic SLP-3Dに対応した入力4
そしてこれらは同時利用が可能ですので、studiologic SLP-3Dを利用しながら、ソフトウェアの何かのパラメータを別のペダルコントローラーなどで操作することも可能。
例えば、ですが「ON/OFF感知のみの入力1」にスイッチペダルを接続してソフトウェアのディレイエフェクトをON/OFFする、とか「コンティニュアンス対応した入力3」にエクスプレッションペダルを接続しソフトウェアのディレイ・フィードバック量を操作する、何てこともできてしまう訳です。
初めて「88鍵盤」を所有する人に知っておいてもらいたい、リアルなお話
YAMAHAのARIUSやPシリーズなどの電子ピアノに共通して見られる特徴は、天面が極力フラットだということ。YAMAHA以外の人気電子ピアノも多くが天面がフラットです。
これには理由があって、多かれ少なかれ「物の置き場所」としての存在価値があるのですね。
なぜなら88鍵盤というものは、その存在自体が場所をとるもの。
88鍵盤のすぐそばに「テーブルを置いて、、、」なんて事は、ちょっと現実味のない話になります。
そしてもっと踏み込んでみますと、88鍵盤を利用するという事は格別「演奏」を大切にしているということ。
つまり「この音が気に入った!」となると、あとは自らの演奏で表現やバリエーションを持たせるのが一般的ですから、手元で「音色を変える」とか「ノブやスイッチを触りまくる」ということはしなくなるのですね。
逆に言えばstudiologic SL88には「置き場所」がしっかりとあります。
ということは「ノブやスイッチの専門機器」をこの天面におくことだって可能。
特に僕が思うのは「パッドなんてまず使わんだろう!」というところなんですが(笑)、必要だとしても鍵盤コントローラーそのものに付いているパッドの性能などはさほど良いものではないですから、中途半端に妥協せずに別途用意したほうが良いと思います。
(そして、手頃で軽くて小さいけど割と使えるパッドコントローラーなんて、nanoPADなどなど結構そこらにあるものです。)
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