機材が「楽器」たるには、「サウンド」と「演奏性」に長けていなければなりません。
多くのアーティストが、高額な楽器を手にする理 由は、常にこの2つの重要な要素を兼ね備えている事が理由であり、ある意味ではアーティストは楽器が持つ「サウンド」と「演奏性」に依存して、自らの作品 を成立させているとも言えます。
この中で「電子楽器」は、「楽器」としては未熟な製品が世に溢れている、という現状があり、現在も過渡期と言える状況です。
こんな状況の中で、「楽器」として非常に稀少な性能を持ち合わせているのが「STUDIOLOGIC」製品。
本物のグランドピアノも取り扱う弊社なら ではの視点で、今回はそんなStudioLogic製品についてご紹介してみたいと思います。
2016/08/04 高品位鍵盤型コントローラーについては別記事にてクローズアップ記事をご用意致しました。
2017/06/19 大人気製品NUMA COMPACTの最新モデル「NUMA COMPACT 2」については別記事にてクローズアップ致しました。
世界中の電子鍵盤楽器を支える「FATAR」
電子キーボードに馴染み深い人は「FATAR」というブランドをご存知ではないでしょうか。
「FATAR」はイタリアに本社を置く 「電子キーボード鍵盤」専門のブランドです。
1980年頃にシンセサイザーなどの電子楽器が爆発的に普及する中、本物のピアノが持つ類い稀な「演奏性能」 を追求するため、いかに演奏性能の高い鍵盤を生み出す事ができるか?という課題に対し、世界的にいち早く高い成果を見い出したブランドです。
今となっては 「FATAR」の鍵盤は、模倣ではなくオリジナルな存在となっている品質であり、その信用が世界的に浸透している事も明白な事実。
なぜなら多くのキーボー ド/シンセサイザーメーカーが自社開発品ではなく、鍵盤だけはFATAR製を採用しているからです。
FATAR製鍵盤を採用するブランド一覧
Clavia、novation、DOEPFER、MOOG(MINI MOOG VOYAGER)、ACCESS Virusシリーズ、NI KOMPLETE KONTROL Sシリーズ、Arturia(Keylab 88)、Roland(V-accordion)、KORG、Kurzweil、ENSONIQ、Alesis、AKAI
※一部製品がFATAR製鍵盤を採用している場合に、以上へブランド名を列挙しております。全ての製品がFATAR製鍵盤であるという事ではありません。
※2015/1/1弊社独自調べ※
日本ブランドにおいてYAMAHA、Rolandといった大手では鍵盤の自社開発を進めているため現在の採用率は低い様ですが、 80〜90年代の鍵盤成長期にはYAMAHA、RolandでもFATAR製鍵盤が多く採用されていたようです。
つまり、現在のYAMAHA、Roland 鍵盤の礎にFATARの技術が存在する可能性さえあるといえますね。
FATARの技術を結集する「STUDIOLOGIC」
「STUDIOLOGIC」というブランドは、FATARそのものが設立したブランド。
FATARが有する今日までの経験と技術を、最も理想的な形で実現する「楽器」を生み出すため発足したFATARの新しいプロジェクトです。
「優れた鍵盤を生み出す」という事はつまり「表情豊かで優れた音」が必要不可欠。
反対に、「表情豊かで優れた音」には「優れた鍵 盤」が必要であり、いずれが欠けても高度な楽器にはなり得ません。
つまり、FATARは優れた鍵盤を製作する反面、「優れたサウンドとはいかなるものか」 を熟知しています。
それに加えて世界中のアーティストや協力関係にあるブランドから提供された技術や意見も広く把握しています。
最新の手法が取り入れられた高品位音源
リアルさを追求するには、何よりも「本物のサウンド」を、「限りなくそのままで」使用する事が望ましいものです。
例えば、打鍵する力に応じて音が「固い」や「柔らかい」を表現するに下記の様な方法があります。
この場合は、「一つのサンプル」をエフェクトで「固く」もしくは「柔らかく」仕上げるという手法です。
この場合、サンプルは1つで済むのでサンプル容量が 小さくメモリなどの記憶領域が小さく済みコストダウンを実現できますが、サウンドはどうしても「作られた音」という感じがしてしまいます。
対してこちらは、「固く」「柔らかく」の2つの音をサンプリングし、プレイヤーの演奏に応じて利用するサンプルそのものを切り替える方法です。
この 場合、サンプリングの手間や時間、そしてサンプル容量が大きくなるためメモリなどの記憶領域も大きなものを使う必要があり、コストが大変かかりますが、サ ウンドは当然、非常にリアルなものになります。
なお、本例では一つの鍵盤(音程)に対し2つのサンプルが用意されている事になりますが、こうした場合は「2レイヤー」等と呼ばれます。つまり、レイヤーとは段階(層)であるということですね。
音の善し悪しに「サンプル容量」は重要
近頃はピアノ音源ソフトウェアがプロの制作現場で頻繁に利用されています。
その中で圧倒的な支持を受けるピアノ音源ソフトウェア 「SYNTHOGY IVORYソフトウェア」は、「サンプルで音を作る」方法を採用したピアノ音源です。
そのサンプル/レイヤー量は他に類を見ないほどの凄まじい膨大で、そ れ故にリアルな音の表情を表現できる訳です。
この話は、電子ピアノにとっても例外ではありません。
ここ日本国内で絶対的に支持される高級電子ピアノ「クラビノーバ」は「RGE 音源」という「サンプルで音を作る」手法を根幹とした音源を搭載しています。
また、下位モデルである「ARIUSシリーズ」や「P-255」などでは、「RGE音源」のサンプル数を大きく絞った音源「RGEスタンダード音源」が採用されています。
同じ「サンプルで音を作る」手法の音源であっても、サンプル量の違いでこれほどの音の違い、評価の違いが生まれる、つまり、「どれだけ大容量のサンプルが採用されているか」という事が、「音が良い」と感じられる為に非常に重要であるという事です。
大容量サンプル音源を採用したStudioLogicピアノシリーズ
なお、StudioLogicのピアノシリーズ「Numa Concert」「Numa Stage」では同価格帯の電子ピアノとして他に類を見ない大容量のサンプリング音源を搭載しています。
しかもレイヤーは「9段階」。
YAMAHAステー ジピアノの大人気モデルであったCP300が「3段階」である事を考えると驚異的なレイヤー数です。
そして重要な事は「サンプルする対象」が肝心だという 事。
YAMAHA電子ピアノでは”YAMAHAグランドピアノ”を中心にサンプリングされていますが、StudioLogicがサンプリングするのは「スタインウェイ」そして「ファツィオリ」のグランドピアノ。
最高品位のグランドピアノのサウンドを、最高品位の鍵盤で実現した「楽器」、それが 「Numa Concert」「Numa Stage」「Numa Compact 2」です。
ピアノタッチだけではないFATARの真骨頂
例えばエレクトリックピアノやキーボードシンセサイザーにしか馴染みが無い人にとっては、ピアノタッチはただ重いだけの代物です。
そうした方々にとって多くの場合「セミウェイテッド」鍵盤をセレクトする事になりますが、「セミウェイテッド」鍵盤といっても実際の弾き心地は全然違うも のです。
Claviaのキーボード。
世界中のアーティストがステージキーボードとして愛用するClaviaのキーボードならば、「間違いない」という感覚はお分かり頂けるかと思いますが、そのClaviaのキーボードこそFatar製。
つまり、Fatar = StudioLogicのセミウェイテッドキーボードなら安心して「演奏できる」品質という事です。
StudioLogic Sledge
シンセサイザーメーカーとして近年復活した強力なブランド「Waldorf」。
このWaldorfの技術を余す事無く注ぎ込んだサウンドエンジンを 搭載し、しかも上述の高品位セミウェイテッドキーボード「TP/9S」を搭載したシンセサイザー「Sledge(スレッジ)」がStudioLogicか らリリースされています。
Waldorfからは「Brofeld Keybord」がリリースされていますが、ご存知の通り「Brofeld Keybord」は操作子を最小限に抑えたモデル。
対して「Sledge(スレッジ)」はアナログ・シンセサイザーライクな操作を実現した本格的なシンセ サイザー。Waldorfの代名詞であるフィルターやPPG Waveを搭載し、完全なるWaldorfサウンド。
「Sledge」はもはや「Brofeld」よりもWaldorfらしいハードウェアシンセサイザー と言えます。
ステージピアノシリーズ・ラインナップ
StudioLogic NUMA CONCERT
木製ハンマーアクション鍵盤「TP/40」を採用した最高品位のステージピアノ。
音源部は大容量レイヤー・サンプリングが採用されサンプリングモデルは「スタインウェイ」「ファツィオリ」。
演奏性もサウンドも贅沢な仕様が実現されたMade In Italyの至高の一品。
- ユーザー・ベロシティ・カーブを学習させられる「Fatar Touch」搭載。
- 弦の共鳴具合を10段階で再現できるストリングス・レゾナンス搭載。
- 寸法:1270 x 310 x 130 mm(W x D x H)
- 重量:20 kg
StudioLogic Numa Stage
フラグシップモデル「NUMA CONCERT」を軽量化、というコンセプトで生まれた「持ち運べる極上のステージピアノ」。
木製ではない鍵盤「TP/100LR」を採用し、大幅な軽量化を実現。
「NUMA CONCERT」と同じ音源、「Fatar Touch」も搭載。
- 「NUMA CONCERT」と同じ最高品位のサウンド
- ユーザー・ベロシティ・カーブを学習させられる「Fatar Touch」搭載。
- 弦の共鳴具合を10段階で再現できるストリングス・レゾナンス搭載。
- 持ち運びに適した重量:13 kg
StudioLogic Numa Compact 2
2017/06/19 Numa Compact 2の発表に伴い情報を更新致しました。
Claviaなどで採用されている「TP/9」セミウェイト・キーボードを採用し、重量7.1 kgと女性でも持ち運べる軽量仕様を実現したライブパフォーマンスに最適なステージピアノ。
最新のstudiologic独自音源を採用し、タッチだけでなく音質性能も大幅に向上。
その他にも本体にミニスピーカーを搭載、ピアノ同様の別売り3本ペダルでの演奏性の拡張まで施された実用的なライブステージピアノです。
- 重量7.1 kgで88鍵盤の本格的な演奏性を実現
- ストリングス・レゾナンスを含む上位モデル同位の高品位音源を惜しみなく搭載。
- ピアノだけでなくエレピ、オルガン、ストリングス、パーカッションなどサウンドバリエーションも豊か。
さて、ここまでで紹介したステージピアノには「弦の共振」を再現するストリング・レゾナンスが搭載。
原音に対しての共振音量を設定可能ですので、好みの共振具合を選択できるのは嬉しいポイント。
下記サウンドサンプルは「ストリング・レゾナンス無し(上)」と「ストリング・レゾナンス全開(下)」です。
これからの主流を押さえた先端モデル
世界は日本に比べると「先端もの」を手早に取り入れ、その恩恵をいち早く享受している印象があります。
日本のプロフェッショナルな方々でも、特に海外と交流が深い方は、日本ではあまり馴染みのない機材を取り入れ、話題になったりもしますよね。
さて、そんな少し目新しくも感じるが、これから確実に浸透していくだろうものに、「コンピュータを音源として使うピアノシステム」というものがあります。
これは「コンピュータ」の中に「ピアノ音源ソフトウェア」をインストールし、「鍵盤型コントローラー」とコンピュータを接続して「ピアノ音源ソフトウェアを演奏する」というシステム。
つまり電子ピアノを例にすると、「コンピュータ(ソフトウェア)」が音源部分、鍵盤部分を「鍵盤型コントローラー」がそれぞれ担う、という形ということです。
面倒なだけのハズの「セパレート」を敢えてする理由
現在、音楽向けパソコンソフトウェアの性能は目まぐるしく進化し、人間の演奏、一流の楽器そのものかと思うほどのクオリティを備えています。
驚くことに近年の音楽CDのリリースでは、「実は人間の演奏ではなくソフトウェアが演奏している」ということが少なくないのが実情。
つまり、現在のソフトウェアは多くの音楽好きの方々でも気付く事が不可能なレベルの超ハイクオリティ音質であるわけですね。
しかもソフトウェアの利点は更にあり、「常にアップデートをしてゆく事ができる」ので、ハード製品のように音質が時代遅れになったり古びた印象になる事がなく、延々と「拡張」まで可能です。
そしてもう一方の「鍵盤」、こちらは「自由が利く」と「コスパが良い」がポイント。
例えば「タッチは良いけど音がなぁ」とか、その逆とか。
しかしセパレートをしている場合であれば、音の好みはソフトウェア、鍵盤の好みはコントローラーと好きなように選べてしまいます。
また「この出演でだけなら妥協できる」というなら軽量であるキーボードタッチ・鍵盤型コントローラーを使えば、背負って移動する事だって考えられる話になります。
このように、選択肢は自由自在になりますね。
そしてコスパの良さ。
studiologic製品で比較すれば、簡単に明らか。
- NUMA STAGE(税込想定売価¥162,000-):電子ピアノ
- SL 88 STAGE(税込想定売価¥69,660-):鍵盤型コントローラー
とっても大切な事は、この2製品の鍵盤的仕様は全く同じ、ということ!
音源があるかないかでこの価格差が出てくる、というのは少し見逃せないポイントだと思います。
さて、こんな「鍵盤型コントローラー」については別途別ページにてまとめました。
ご興味がある方は是非こちらもご参照ください!
FATERではなく、FATARです
誤字のご指摘、有難うございます!
横文字が苦手なもので間違えてしまったと思われます、、、申し訳ございませんでした!
ところで情けない話ですが記事中ご指摘の箇所を探しましたが見つけられませんでした、、、
もし気が向きましたなら改めてご教示いただけませんでしょうか?
恐れ入りますが何卒宜しくお願い致します。