結論から言うとTRAKTOR KONTROL D2は、クリエーターに使って頂きたいハイレベルなコントローラー。
もう少し具体的にいうと、真剣に音楽を作り、その結果を「柔軟に」「手間がなく」パフォーマンスをするツールとして非常に適した製品。
同じような謳い文句を持つ TRAKTOR KONTROL S5 / S8 を選択するという道もありますが、TRAKTOR KONTROL D2 は 既に作曲やDJ/ライブ活動を行う方にとって、そのポテンシャルも自由度において最も効率が良いものだと思います。
さて、本記事は以上の結論を述べるに至ったポイントをご紹介してゆきたいと思います。
ちなみに「TRAKTOR KONTROL D2ってなに?」という方は、まずはこの動画を見てみてください。
なんだかスゴい面白そうでしょ?(笑)
これが TRAKTOR KONTROL D2 です。
もくじ
TRAKTOR KONTROL D2の真価は、2つのポイントを押さえると理解できる。
表題の通り、TRAKTOR KONTROL D2を知るという事は、それ以前に以下の2つのポイントを知る必要があります。
- NIが定義した「Stems」とは
- TRAKTOR KONTROL S5 / S8 とは
「Stems」とは、一曲の中に複数のトラックが収められているNIが新定義したマルチトラック・オーディオフォーマット。
TRAKTOR KONTROL S5 / S8 とは、新しいDJシステムとして利用者が急増しているデジタルDJシステム、と世間で認識されている機材。
これら一つ一つを見るだけなら簡単に認識・理解が出来るものですが、実用性などを考えた現実的な話にまで事を及ばせると、初めて TRAKTOR KONTROL D2 の本当の素晴らしさ、効率の良さが理解できると思いますので、まずはこれらをご紹介してみたいと思います。
「いやいや、もう知ってるから!」という方は、下のリンクからTRAKTOR KONTROL D2 の核心部分まで飛ばしてください。
Stemsとは?
Stemsとは、一つのファイルの中に複数のトラックが含まれているマルチトラック・オーディオファイルの規格名です。
例えば4人編成のバンドがあったとして、それぞれが「ドラム」「ベース」「ギター」「ボーカル」の4つのパートを録音し、それらをミックスすると、「2mix」と呼ばれる一般的にいうところの「音楽ファイル」になるという事は、音楽制作をする方はみなさんご存知だと思います。
この「ドラム」「ベース」「ギター」「ボーカル」の4トラックが分離した状態のままで、一つの音楽ファイルとして扱う事ができるのが、Stemsファイルです。
なぜそんなものが必要なの?というところですが、これはDJ特有の、特にクリエイターを兼任する人なら特別に悩ましい希望である「キックだけを抜きたい」「ベースだけを抜きたい」「ギターだけを別の楽曲にミックスしたい」という希望を叶えるものだからです。
また、TRAKTORソフトウェアはエフェクターも内蔵しておりますが、「ギターにだけエフェクトを掛ける」というような事も可能にしてしまうので、もしこんなファイルが世界中で広まったなら、DJプレイはもはや「曲単位」ではなく「パート単位」でミックスする時代となり、クリエイティビティは凄まじい事になりますね。
そんな規格をNIが提唱し、現在世界中の様々なアーティストがこれに注目している状況です。
Stemファイルは自分で作れる?
ここまでの話は、あくまで「Stemsファイルを手にいれる」事を前提にしたような口ぶりで進めてきましたが、そもそもStemsファイル自体を自分で作れたなら、クリエイターにとっては「制作とライブ」という非常に高い敷居が取り払われる事になります。
つまり、すべて自分の楽曲だけで、即興的にパーツ単位のミックスやエフェクトパフォーマンスを繰り広げたならば、自分も聞いた事のない楽曲がそこに生まれる訳で、これは文字通り新しい形のライブと言えるでしょう。
Stemsは、クリエイターにとっては非常に特別な意味を持つ、という訳です。
さて前置きが長くなりましたが、表題の答えは「イエス」です。
現在「stems-music.com」にて、「STEMS CREATOR」というソフトウェアが無償提供されており、これを用いるとStemsファイルを生成する事が可能です。
STEMS CREATORは、Windows / Macintosh それぞれに用意されておりますので、大半の方がStemsファイルを作成できると言ってよいでしょう。
STEMS CREATORは、簡単?
STEMS CREATORそのものの使い方は非常に簡単です。
4つのパートトラックと2mixを用意し、それをSTEMS CREATORに読み込ませて変換ボタンを押す、くらいの動作でStemsファイルを作成できます。
イメージとしては、wavをmp3に変換するなどで使用するエンコーダーソフトのような使い勝手ですね。
むしろ、Stemsファイルを作るという事は、楽曲を4つのパーツに分けないといけない、という点こそ悩みどころかも知れません。
というのも今時のDAWソフトウェアや、同社のMASCHINEであれば「トラックを選択してのバウンス(書き出し)」ができる機能が内蔵されていますので、制作済みのプロジェクトから「4つのパーツ」となるトラックを選択しバウンスするだけですから、作業自体は難しくはないですが、「実用の際に一番効率的な4つのパーツ」を考える事に少し悩みそうですね(笑)
革新的システム|TRAKTOR KONTROL S5 / S8
Stemsが登場する以前に、NIはRemixDeckを発表しました。
この頃からNIは一般的に「DJのためのもの」とされてきたDJ機材を、クリエイターのパフォーマンスツール、リミックスツールとしての側面を打ち出してきています。
ヨーロッパの音楽シーンに明るい人ならばご存知であると思いますが、今や「曲を作るDJ」が大半であり、曲を作らないDJというのは圧倒的に少数です。これを裏付ける豆知識としては、海外ではDJの事をプロデューサーと呼ぶ事が常識。この言葉も「DJをする事とはイコール作曲をする人」という事が結びついての事らしいです。
NIとしてはMASCHINEはもちろん、KOMPLETE、MASSIVE、REAKTORなどのソフトシンセ、つまり音楽制作に直接関わる製品を生みだしながら、DJツールも世に送り出していた訳ですから、この潮流は十分に認識しており、そのため「クリエイターにも使われるDJ機材」というコンセプトに力が入っているというわけですね。
さて、そんなNIが出した一手が、前項の「Stems」。
そして第二手が、Stemsを悠々と有機的にコントロールする TRAKTOR KONTROL S8 と、その凝縮版である TRAKTOR KONTROL S5 の登場です。
つまり TRAKTOR KONTROL S5 / S8 は、それまでの TRAKTOR KONTROL の流れは汲みながらも、ライブパフォーマンスツールとしての側面もブラッシュアップした、革新的なDJ/ライブパフォーマンスツールである訳です。
同じのようでいて、実はかなり異なるTRAKTOR KONTROL S5 / S8
Stemsを中心に考えると、TRAKTOR KONTROL S5 と S8 は全く異なる事がわかります。
それは、TRAKTOR KONTROL S5 には「パフォーマンスフェーダー」が無い、ということ。
さらに、パフォーマンスフェーダーだけでなく、その上部にあるエンコーダーやスイッチもありません。
これはStemを重視する観点からすると非常に悩ましい仕様といえます。
というのも、Stemsの醍醐味は「一つの楽曲の ”望みのパーツ” のみを抜き差しできる」ところにある訳で、その抜き差しする為の専用フェーダーが無いというのは、、、という話。
また D2 / S8 のパフォーマンスフェーダー上部のエンコーダーやスイッチは、Stemの各トラックに対するエフェクト操作で使われる部分であり、例えば「ボーカルにだけリバーブを掛ける」というような個別のエフェクトを実現するには大切な部分でもあります。
とはいったものの「出来無い」わけでもありません。
Stemsトラックのボリュームは、パッドでのオン/オフが可能です。
またエフェクトに関しても、エフェクトをかけたいパッド(トラック)を選択中に、ディスプレイ下のエンコーダーでエフェクトセンド量を操作する事は可能です。
が、やはり、現場で混乱せずにこうした動作を冷静に行えるのか?というと、なかなか余裕!とはいえないものですよね。ここは少し悩ましい部分です。。。
※当記事の最後には、この問題を解消する記事も掲載していますので、もしよければ御一読ください。
※TRAKTOR KONTROL S5 での RemixDeckモードの場合、パッドを押す事でループ再生が開始、停止する場合は Shift+パッド で止める事が可能です。RemixDeckの場合は扱う音源がループですから、フェーダーがなくとも大きな問題にはならなさそうですね。
TRAKTOR KONTROL D2とは?
ここまでの Stems と TRAKTOR KONTOROL S5 / S8 を踏まえた上で、この製品を簡潔に紹介すると「TRAKTOR KONTROL S8のデッキ部分を独立させたStems対応コントローラー」と言えます。
それがどうして効率が良いのか?というところを、ちょっとクローズアップしてみます。
日本のDJの現場と実用性
TRAKTOR KONTROL S5 / S8 がStemsに対応していることでDJ/クリエイターにとってオススメであることは、ここまででお伝えしました。
しかし、実際のクラブユースで考えると、筐体が大きい事で嫌がられる、持ち運びが辛い、という問題があり少し難しいものがあります。
海外のイベントスペースでは、スペース的な余地に恵まれている、DJコントローラーに理解があるといった理由で TRAKTOR KONTROL S5 / S8 を持ち込む事は比較的容易ですが、日本では大型クラブであっても未だにDJコントローラーに対する理解が薄ように思います。
もう少し時間が経過すると、クラブ側、運営側の理解も深まって行くかもしれませんけども。
対してDVSや、TRAKTOR KONTROL X1 などのDVSと連動して使えるコントローラーというものは既に広く理解がされています。もちろん持ち運びもそれほど苦になりません。
つまり、現場ユースで考えると、TRAKTOR KONTROL S8のデッキ部分という TRAKTOR KONTROL D2 のコンパクトさと能力は非常に優れているというわけですね。
そもそもTRAKTORってどうなの?
これも現場でよく言われるポイントですね。
確かに音は良い、エフェクトも魅力的だ。
だけどもSeratoと比べて使い勝手が悪い、難しい、複雑だというわけです。
この原因は、TRAKTORソフトウェアが様々な機能を備えており、かつカスタマイズが可能である事、さらにその柔軟性を存分に享受するためにNI製ではないお気に入りのインターフェースやMIDIコントローラーを使える、という事で、単純に基本的なDJがしたいだけの人にとってワケが分からないものになってしまっている、というように思います。
TRAKTORは玄人向け、なんて事をいう人がいるのは、こうしたデジタル機材の知識があるかどうか、というところにあるわけですね。
しかし、クリエイターが日々利用するDAWやMASCHINEと比べて難しいものか?といえば、全くそんな事はなく、非常に簡単でわかりやすいものです。
それに加えて様々なパフォーマンスツールやパフォーマンス補助機能が多数備わっており、DJができなくてもDJができる、ライブパフォーマンスに適したモードを利用して、安心して、冒険的なパフォーマンスを存分に楽しむ事ができます。
つまり、クリエイターのためのツールとしての側面にも大きな力を注いできたTRAKTORは、今や「曲を作るDJ」にこそ魅力的なものとなっているのかもしれません。
現場だからこそ、TRAKTOR KONTROL D2がオススメ
TRAKTOR KONTROL D2は、様々なパフォーマンス能力がふんだんに備えられたCDJだと思ってください。そしてこのCDJは一台で4曲(パーツ)が再生できるもの、として考えてみてください。
すると、単にCDJである訳ですから、今まで通り 「現場のミキサー」を使えば良い訳です。
しかもTRAKTOR KONTROL D2は、一台でTRAKTORソフトウェア内のデッキを切り替える事ができます。
つまり極端にいえば、一台二役の4曲再生対応CDJ、という使い方まで可能という訳です!
やはり右と左の2台の TRAKTOR KONTROL D2 があるほうが、「今どっちのデッキにフォーカスしてるんだっけ?」という一瞬の悩みがない分、おすすめですが、決して安い製品ではないので、まずは一台でどうにかしようとしてみることは、とりあえず、オススメします。(DECK切り替えの方法については、後述しています!)
なお、「CDJじゃなくてターンテーブルが好きなんだけど。」とか「CDJ派だけどもジョグホイールは必須だ」という方には、TRAKTOR SCRATCHも合わせて導入すれば解決。
TRAKTOR KONTROL D2は、これらのNI製のDVSとの共存も可能ですので、現在DVS利用中の方への「クリエイティブ・パフォーマンスを開始する」機材としてもオススメです。
ご注意:TRAKTORソフトウェアのDECK出力を分けて、現場ミキサーの各チャンネルへ個別に出力する場合には、マルチアウト対応(モノラル4CH以上)のオーディオインターフェースが必要となります。
現場のミキサーを使わない場合、どうすれば?
現場のミキサーを使わず「ライブセット」的なニュアンスで独立してパフォーマンスをする場合には、別途DJミキサーを用意してもらう以外にTRAKTOR KONTROL Z1などのDJミキサー的なコントローラーの導入がオススメです。
これを使えばTRAKTORソフトウェア内の仮想DJミキサー部分の操作が可能になりますので、ヘッドフォンCUEやミキシングが可能に。さらに TRAKTOR KONTROL Z1 にはオーディオインターフェースも内蔵されているので、メイン出力をそのままPAさんの渡せばOKでもあります。
そして、更にもう一つのアドバンテージも。
TRAKTOR KONTROL D2 には、USBハブが付いているのです。
TRAKTOR KONTROL D2 は、電源供給が必要な機材ですが、それゆえバスパワー駆動のコントローラーも安定してご利用できます。
最近のMacではUSBポートが少なくなっている傾向がありますが、D2を使う場合にはUSBポートが一つあればOKですね。
TRAKTOR KONTROL D2の機能
まずは上から順番に各部の説明から。
FX
エフェクトをコントロールする部分。
エフェクトにはエフェクトデッキというエフェクターの設定だけを司る部分がありますので、それをコントロールできます。エフェクトは多種多様なエフェクトが満載。
これらエフェクトの品質は他社のDJソフトウェアユーザーからも評価されているほどです。
Display & Browse
カラーディスプレイで詳細に情報が表示されます。
ディスプレイ横の小さなボタンで、波形のZOOM IN/OUTやDECK表示のモードの切り替え、またはSTEMS/REMIX DECKにまつわる情報画面の切り替えなどが行えます。
またディスプレイ横のノブはクリック式のプッシュボタン・エンコーダー。
ここで選曲/Remixi Setの選択、Stemsファイルの選択が容易に行うことができます。
ちなみにディスプレイは都度切り替わってくれますので、選曲時には楽曲の把握が非常に楽。
コンピュータ〜TRAKTOR KONTROL D2本体と、目の移動をしなくて良いのは本当にパフォーマンス性が向上します。
Stems / Remix Deck
TRAKTOR KONTROL D2の最大のポイントともいえる部分です。
ここでStems / Remix Deckの各トラックのボリューム(フェーダー)、エフェクトセンド(エンコーダー)をコントロールすることが可能です。
後述しますが、ここでの操作はディスプレイとの連動もされるので、暗い場所での操作も非常に楽。
しかもタッチセンシティブですので、軽く触れればパラメータの現状が表示されますので、非常に使い勝手も良いです。
CUE / LOOP / FREEZE / REMIX / FLUX
パッドでCUE / LOOP / FREEZE / REMIX DECK / FLUXをコントロールできます。
いわゆるDVSユースでは基本的にLOOPとHOTCUE位しか使わなかったのでは?と思いますが、Stemsを用いたライブパフォーマンスとしてのスタンスであれば、これらの機能を存分に使って頂きたいところ。
パーツ単位での扱いとなるわけですから、扱う音の数は増えるわけですが、カラーパッド&カラーディスプレイにより直感的な操作ができるので、あまり悩みどころはないのでは?と思います。
TRANSPORT
ジョグに変わる機能をもたらすタッチセンシティブ・コントロールにより、難なく頭出しやCUEマーカーのポイントを探し出すことが可能です。SHIFTを押しながらのタッチセンシティブ・コントロールでは「針を落とすような」移動が可能ですので、ミックス系スタイルの自分としては、ジョグよりも遥かに使い勝手が良いです。
おなじみのSYNC、CUE、PLAYボタンも付いており、手元に届けばスグに使えるわかりやすさです。
一つのTRAKTOR KONTROL D2だけで複数のDECKを操作可能
非常に簡単な操作で、手元のTRAKTOR KONTROL D2のコントロール対象DECKのフォーカスを切り替える事ができます。
基本的にパフォーマンスなどで「DECK」ボタンは押すことは無いでしょうから、誤操作が起こりにくい、ということも、とっても重要だと思いました。
フォーカスを切り替えるとディスプレイやカラーパッドも連動して切り替わります。
ディスプレイには現在フォーカス中のDECK名が表示されるので、即座に現状を把握できるのもカラーディスプレイの恩恵ですね。
さて、こうしてフォーカスを簡単に切り替えられるといっても、フェーダーのパラメータが切り替わるわけでは無い、というのは不安なポイント。
ですがこの辺りもしっかり考えられています。
タッチセンシティブ・フェーダーを触ると、ディスプレイには現在のフェーダー状況が表示されます。
上記画像のような具合で状況表示されるのですが、、、
- 「赤い枠」がある場合、フェーダーを操作しても「フェーダーが赤枠に重なる」までパラメーター変化を起こしません。(番号「1」「4」の状態)
- フェーダーが赤枠と重なった時点(番号「2」の状態)で、初めてフェーダー操作が可能になります。
- フェーダー操作が可能となれば赤枠は消えます(番号「3」の状態)。
という訳で、一目見て今どんな状況かが分かるので、DECKを切り替えたらこれだけ気をつければ良い訳です。
そして、この点を気をつけるもどうしても面倒だ!となるならば、もう一つD2を導入すれば?と思うのですが、どうでしょう(笑)
TRAKTOR KONTROL S5よりも、TRAKTOR KONTROL D2を2つの方がオススメ。
TRAKTOR KONTROL S5 / S8 の項目でご紹介した通り、TRAKTOR KONTROL S5でのStemsファイルの取り扱いはかなりの悩みどころです。
それに対して TRAKTOR KONTROL D2 2つであれば、なんの問題もありません。
簡単に比較してみると、、、、
- TRAKTOR KONTROL S5 × 1 = ¥99800-(Stemsを扱い辛い、仮想ミキサー操作可能)
- TRAKTOR KONTROL D2 × 2 = ¥115600-(Stemsに抜群、ミキサーなし)
- TRAKTOR KONTROL S8 × 1 = ¥139800-(Stemsに抜群、仮想ミキサー操作可能、大きい)
つまり現場にも出向く方には、TRAKTOR KONTROL D2 の方が効率が良さそうということ。
冒頭で「既に作曲やDJ/ライブ活動を行う方にとって、」と表現したのは、こういう意味ですね。
TRAKTOR KONTROL F1じゃダメなの?
TRAKTOR KONTROL D2 ではなく TRAKTOR KONTROL F1 で良いのでは?と思う方がいらっしゃるかと思いますが、Stemsを扱うのであれば TRAKTOR KONTROL D2 を選択するべきです。
まず基本的な事ですが、TRAKTOR KONTROL F1 にはタッチセンシティブ・コントロールを始めとするトランスポートが無い、ということ。
つまり TRAKTOR KONTROL D2 のように独立して利用するのは、ほぼオススメできません。
ただしこの問題は、TRAKTOR SCRATCH や デジタルDJコントローラーとの併用でクリアにできます。
しかし、まだまだ気になる点はあるのです。。。
TRAKTOR KONTROL F1 でも確かにStemsファイルの操作は可能。
ですが、様々な制約があり、なかでもディスプレイが無いということはかなりのデメリット。
例えば、これはStemsファイルを読み込んだ場合の TRAKTOR KONTROL D2 のディスプレイ。
そしてTraktorソフトウェアの画面はというと、、、
Stemsファイルの各トラック情報がほとんど表示されず、まるで2mixの楽曲を読み込んだような見た目。
つまり、Stemsの各トラック情報を認識するには、TRAKTOR KONTROL S5 / S8 、そして TRAKTOR KONTROL D2 といったStems対応のディスプレイ搭載モデルを選択する必要があるということです。
Stemsの良い部分は、iTunesやQuickTimeなどのオーディオプレーヤーでも、普通のオーディオファイルとして扱うことができる、つまり大抵の音楽ファイルと同様にStemを扱うことができるため、普段はまるでマルチトラック・オーディオファイルでは無いような振る舞いをしてくれるんですね。
なので逆にTraktorソフトウェアに読み込んだ時点では今まで同様の使い勝手を採用し、Stemsを使ったパフォーマンスをしようという環境、つまり TRAKTOR KONTROL S5 / S8 か、TRAKTOR KONTROL D2が接続された状態で初めてマルチトラック・ファイルであることを認識できるようにしているわけですね。
2016/02/23追記:TRAKTOR PRO 2のアップデートにより、ソフトウェア側でもStemsトラックが表示されるようになりました。詳しくは「Stems View登場」をご覧下さい。
というわけで、ディスプレイの存在というのはこういうところでも大きな意味があるわけです。
加えて TRAKTOR KONTROL D2 のエンコーダーはフィルターやエフェクトセンドなどが操作可能ですが、TRAKTOR KONTROL F1 のフィルターノブは、Stemsのエフェクトセンドにはなりません。
つまり TRAKTOR KONTROL F1 ではStemsトラックのフェーダー操作ができる、ただし各トラック情報は見えない状態、という機材であるわけです。
おまけ
当記事では TRAKTOR KONTROL D2 をメインとして作成した記事であるため、TRAKTOR KONTROL S5 S8 / F1 を攻撃しているような受け取り方もできるような記事になってしまいました(笑)
ですが、これら TRAKTOR KONTROL S5 / S8 / F1 も素晴らしい機材です。
まず第一に、TRAKTOR KONTROL D2 は冒頭で「クリエーターに使って頂きたいハイレベルなコントローラー」と評した通り、ある程度 TRAKTOR や音楽制作に慣れ親しんだ人にオススメな機材。
逆に言えば、音楽制作も現場DJ/ライブも、そしてTRAKTORにも全く馴染みが無い方には少し敷居の高い機材という事。その反対に、初めて「デジタルDJ機材に挑戦してみよう!」とか「ライブも視野に入れたパフォーマンスツールを探してる!」という方には TRAKTOR KONTROL S5 / S8 は非常に素晴らしい機材であるわけです。
当記事でも所々で「使い方、併用の仕方」みたいな事を書き連ねましたが、TRAKTOR KONTROL S5 / S8 は基本的に「購入 -> ソフトのインストール -> アクティベーション -> USB一本接続」という、非常に、これ以上無いくらいシンプルなセッティングで利用を開始できます。
TRAKTOR KONTROL D2のように「何かと組み合わせて」何て事を一切考えずに済むわけです。
しかもTRAKTOR KONTROL S5 / S8 に慣れ親しみさえすれば、TRAKTOR KONTROL D2 にできる事は大抵TRAKTOR KONTROL S5 / S8 でもできるようになる。つまりTRAKTOR KONTROL S5 / S8 を手に入れたとしても損をした、という事にはならないでしょう。
当記事はあくまでも、既存のTRAKTORユーザーや音楽制作の玄人さんたちに、「費用効率と現場志向を重視した場合にTRAKTOR KONTROL D2 は凄く良いものですよ」と伝えるためのものだという事です。
さて、当記事では TRAKTOR KONTROL S5 を特に攻撃しました(笑)
ですので、少しゴメンナサイの意味も込めてオススメな組み合わせ方をご紹介してみたいと思います。
TRAKTOR KONTROL S5 & TRAKTOR KONTROL F1
TRAKTOR KONTROL S5では、パフォーマンスフェーダーが無いためにStemsの操作に難あり、とお伝えしました。これはつまり「抜き差し(オン/オフ)」は出来ても、フェーダー操作による「調整」はでき無いというのが 難あり という事でした。
また TRAKTOR KONTROL F1 では、ディスプレイが無いためStemsを視覚的に認知できず難あり、とお伝えしました。
という事は表題の通り、
- ディスプレイを搭載した TRAKTOR KONTROL S5
- Stems対応フェーダーを搭載した TRAKTOR KONTROL F1
を併用すれば、問題は解決するわけです。
また、TRAKTORに馴染みの無い方にとって「Stemsって本当にライブで有用なの?」という気持ちが少しはあるでしょう。
ですから「TRAKTOR KONTROL S5 を購入」->「使い勝手も慣れてきてStems最高!」->「TRAKTOR KONTROL F1 を購入」という流れが一番合理的。
あくまでも、Stemsは「ライブパフォーマンスの裾野をより広げる」という話であって、そもそもTRAKTORにはRemixDeck、Flux、Loop、Cueなどがあるわけですから、Stemsがなくても自作曲を使ったライブパフォーマンスはできてしまいます。
となると「TRAKTOR KONTROL S5単体でも十分」となる可能性だってあり、更に TRAKTOR KONTROL S5 単体では全くStemsが使えない訳でも無いですので、これで満足できるなら無駄使いをする必要は無いと思います。
TRAKTOR KONTROL F1 を導入しよう!と思い立った場合
できれば TRAKTOR KONTROL F1 は2つあるほうが良いでしょう。
TRAKTOR KONTROL D2 1台でやりくりできる、という当記事の内容にもありました通り、DECKフォーカスを切り替えた場合のフェーダー位置の問題があるので、混乱しないためには 2つあるほうが安心安全だからです。
さて、TRAKTOR KONTROL F1 1台のお値段は、¥24800-。
2台となると、¥49600- となりますので、やっぱりこの問題も一つづつ導入するのがオススメです。
というのも、「F1を追加導入しよう!」と思い立つ頃には RemixDeck の面白さにも気付いているだろうと思います。そこで、Stemsを中心として考えるのではなく、RemixDeckを中心に考えるのであれば、むしろ TRAKTOR KONTROL S8 よりも TRAKTOR KONTROL D2 よりも 、TRAKTOR KONTROL F1 のほうがパフォーマンスパッドが多いので優れているからです。
だからもしStemsやっぱり必要無いや、となったとしても、TRAKTOR KONTROL F1 が無駄になりませんので、一つづつ導入するのがオススメという事です。
当記事は2016/01/22に作成されました。製品更新などにより、情報の正確性が失われている可能性がございます。また、情報の正確性についての保証は御座いません。より正確な情報は日本正規代理店までお問い合わせ下さい。
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